AI副業を始めた初年度、多くの人がぶつかる壁がある。ChatGPT PlusやMidjourneyの有料プランを使っているのに、確定申告で経費に計上できていないパターンだ。
2026年9月現在、ChatGPT Plusは月約3,000円(税込)、Midjourney Standardプランは月約4,500円かかる。年間で合計すると6万〜9万円規模の出費になる。副業に使っているなら、これを経費として申告しない手はない。
本記事では、AIサブスクの按分計算の具体的な手順と、雑所得・事業所得それぞれの経費認定の考え方を実務ベースで整理する。原田自身も複数のAIサブスクを使って受託案件をこなしており、初年度の申告で試行錯誤した経験から手順をまとめた。
「按分」の基本:AIサブスクはなぜ全額経費にならないのか
ChatGPT Plusを「副業に使っているから全額経費」と処理したい気持ちは分かる。ただ、同じアカウントでプライベートの調べ物や日常的なやり取りにも使っている場合、税務上は業務使用割合に応じた金額しか経費として認められない。
按分(あんぶん)とは、一つの支出を業務用とプライベート用に分けて計算することだ。スマートフォンの通信費を「仕事7割・私用3割」で按分するのと同じ考え方で、AIサブスクにも適用できる。国税庁の「必要経費となる家事関連費」では、業務と家事の両方に使う支出は、業務使用割合分だけを経費として認めると説明している。
逆に言えば、副業専用のアカウントとして使っている場合は100%経費計上が可能だ。副業専用のアカウントを別途用意しているか、利用履歴が業務一色であることを示せれば、按分せず全額を経費にできる。
雑所得と事業所得:どちらで申告するかで経費の扱いが変わる
AI副業の確定申告では、まず「所得区分」を決める必要がある。多くの副業初年度では雑所得に該当することが多い。
雑所得の場合
雑所得は「収入金額 − 必要経費」が課税対象になる。国税庁の解説によると、必要経費として認められるのは「その収入を得るために直接かかった費用」だ。ChatGPTで文章を生成して受託案件をこなしているなら、ChatGPT Plusの費用は必要経費として認められる根拠になる。
なお、給与所得者(会社員)が副業で雑所得を得る場合、副業の年間所得が20万円以下なら確定申告は不要だ(ただし住民税の申告は別途必要なケースあり)。20万円を超えた年から経費も合わせて申告する。
事業所得の場合
副業が継続的・反復的で、規模・実態が「事業」と認められると事業所得になる。事業所得のメリットは、青色申告を選択した場合に最大65万円の特別控除(e-Tax申告の場合)が受けられることだ。また、雑所得より経費の認定範囲が広くなる傾向がある。
ただし、副業が自動的に事業所得になるわけではない。国税庁の通達(2022年改正)では、帳簿書類の保存がない場合は原則として雑所得として取り扱うとされた。副業初年度の人は、まず雑所得として申告し、規模が拡大したら事業所得への切り替えを税理士と相談するのが現実的だ。
ChatGPT・Midjourney・Claudeの按分計算:具体的な手順
原田が初年度の申告で実際に行った方法は「使用時間ベースの按分」だ。ChatGPTの会話ログを振り返り、副業案件に使った時間と私的使用の時間を月単位で集計して割合を出した。数値の根拠が残るため、税務署への説明がしやすい。
Step 1: 月あたりの使用実態を記録する
按分割合を計算するには、「副業での使用割合」を合理的な根拠をもとに示す必要がある。最も説明しやすいのは使用時間ベースだ。
例として、ChatGPT Plusを1日2時間使い、うち1.5時間が副業案件の作業に使っている場合:
- 副業使用割合:1.5時間 ÷ 2時間 = 75%
- ChatGPT Plus 月額:約3,000円(税込、2026年9月現在)
- 月あたり経費計上額:3,000円 × 75% = 2,250円
- 年間経費計上額:2,250円 × 12ヶ月 = 27,000円
Step 2: 主要AIサブスクの月額を把握する(2026年9月時点)
各サービスの月額はドル建てのため、為替レートによって変動する。申告する年の実際の支払額をメールの請求書で確認することが重要だ。
- ChatGPT Plus:月$20(税込約3,000〜3,200円)
- Midjourney Basic:月$10(約1,500〜1,600円)
- Midjourney Standard:月$30(約4,500〜4,800円)
- Claude Pro:月$20(約3,000〜3,200円)
ドル建てのサービスは支払い時のレートで実際の円換算額が変わる。正確な経費額はクレジットカードの請求明細や領収書メールに記載された日本円の金額を使うこと。
Step 3: 複数サービスを合算して経費総額を算出する
ChatGPT Plus・Midjourney Standard・Claude Proを併用している場合の計算例(各サービスで按分割合は異なっていてよい):
- ChatGPT Plus:月3,000円 × 按分80%= 2,400円
- Midjourney Standard:月4,500円 × 按分90%= 4,050円
- Claude Pro:月3,000円 × 按分60%= 1,800円
- 月間合計経費:8,250円 → 年間99,000円
各サービスで按分割合が異なっても問題ない。サービスごとに合理的な根拠(使用目的・使用時間・案件への紐付け)があれば認められる。
経費認定のために残すべき記録
按分を申告に活用するには、後から「この割合の根拠は?」と聞かれても答えられる記録が必要だ。税務調査は申告から5〜7年後に来ることもある。申告時点で記録を整理しておくことを勧める。
最低限残すべきもの
- 支払い明細:クレジットカードの請求書、または各サービスの領収書メールをPDFで保存(確定申告の対象年分すべて)
- 按分根拠のメモ:「月〇時間を副業案件に使用、全体使用時間の〇%が業務用」といった記録を、スプレッドシートやノートで月次管理する
- 使用実績の証拠:ChatGPTの会話履歴(エクスポート機能あり)、Midjourneyの生成ログ、案件の納品物・契約書・振込明細など
帳簿保存の義務について
国税庁の2022年改正通達によると、副業の雑所得が年間300万円を超える場合、現金主義で記帳した帳簿の保存が義務になった。多くのAI副業初年度の方は300万円未満に収まると思われるが、帳簿をつけておくことで青色申告や事業所得への切り替えもしやすくなる。freeeやマネーフォワードクラウド確定申告などのクラウド会計ソフトを使えば、領収書の取り込みから按分設定まで対応している。
申告書への記載方法
確定申告書(e-Taxで提出が一般的)での記載方法を確認しておこう。
雑所得の場合
「収支内訳書(雑所得用)」の経費欄に按分後の金額を記載する。AIサブスクは「通信費」または「消耗品費」として計上しているケースが多い。勘定科目の厳密な分類より、同じ科目を毎年継続して使うことの方が重要だ。科目名を変えると「なぜ変えたか」の説明が必要になる。
事業所得の場合
青色申告決算書または収支内訳書(白色申告)の「経費の内訳」に記載する。freeeなどの会計ソフトでは「クラウドサービス費」という科目が用意されていることもある。各ツールごとに按分設定を登録しておけば、毎月の自動仕訳の精度が上がる。
FAQ
ChatGPT Plusを副業に使い始めたのが年の途中からです。経費はどう計算しますか?
使用した月数分だけ経費計上できます。例えば7月から12月まで6ヶ月間使用した場合、月額 × 按分割合 × 6ヶ月分が年間の経費になります。支払い明細で実際の引き落とし月を確認して計算してください。
副業の年間収入が20万円以下の場合、AIサブスクの経費は申告できますか?
給与所得者の副業所得が20万円以下の場合、確定申告は原則不要です(住民税申告が必要なケースはあり)。申告不要の年は経費控除の手続きも不要です。20万円を超えた年から経費も合わせて申告します。なお、還付を受けるために任意で申告することも可能です。
MidjourneyやClaude Proの領収書はどこで取得できますか?
MidjourneyはDiscordのアカウント設定またはmidjourney.comのBilling画面から、Claude ProはClaude.aiのSettings→Billingから、ChatGPT PlusはOpenAIのアカウント管理ページからPDF形式でダウンロードできます(2026年9月時点)。クレジットカードの明細と合わせて保存しておきましょう。
按分割合は毎年変えてもいいですか?
業務使用の実態が変われば按分割合を変えることは問題ありません。ただし、前年より大幅に変更する場合は根拠のメモをより丁寧に残しておくことを勧めます。毎年同じ割合を使い続けることが税務上の説明のしやすさにつながります。
AI副業の確定申告を税理士に頼む目安は?
副業収入が年間100万円を超えてきた場合、または事業所得への切り替えや青色申告を検討し始めた場合は、税理士への相談が費用対効果で見合ってきます。雑所得の段階で収入が少ない場合は、e-Taxの案内に沿って自分で申告することで十分対応できるケースが多いです。