副業で雑所得が50万円・100万円と増えてくると、税負担の重さを実感し始める人が多い。本業の給与に上乗せして課税されるため、税率が一段階上がるケースも珍しくないからだ。

そこで活きるのがiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金全額所得控除だ。年間最大276,000円(月23,000円×12ヶ月)を所得から差し引けるため、税率が高いほど手取りへの恩恵が大きい。年収300〜700万円・副業雑所得50〜100万円のパターンで、具体的にいくら節税できるかを試算した。

副業の雑所得が増えると税負担がどう変わるか

会社員の副業収入(ライティング・コンサル・YouTube広告収益など)は、多くの場合「雑所得」として確定申告が必要になる。雑所得は本業の給与所得と合算され、総合課税の対象となる。

日本の所得税は累進課税(国税庁)なので、課税所得が増えるほど税率が上がる。2026年4月現在の主な税率ゾーンは以下のとおりだ。

課税所得(合計)所得税率住民税込みの実効税率
195万円以下5%15%
195万〜330万円10%20%
330万〜695万円20%30%
695万〜900万円23%33%

住民税は所得にかかわらず一律10%(道府県民税4%+市町村民税6%)だ。副業で雑所得が増えると、これらの税率ゾーンを「跨ぐ」ことで税負担が跳ね上がる。

たとえば年収500万円の会社員が副業で100万円を稼ぐと、課税所得が330万円ラインを超えて20%ゾーンに入るケースがある。この「ゾーン跨ぎ」が起きているほど、iDeCoの節税効果は大きくなる。

iDeCoの仕組みと会社員が使える掛金上限

iDeCoは、毎月の掛金を自分で積み立てて老後資金を作る「個人型確定拠出年金」だ。最大の特徴は、掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれることにある(国税庁:小規模企業共済等掛金控除)。

会社員が使える掛金上限は加入状況によって異なる(iDeCo公式サイト)。

会社員の区分月額上限年間上限
企業年金なし23,000円276,000円
企業型DCのみ(確定給付型なし)最大20,000円※最大240,000円※
確定給付型(DB)あり12,000円144,000円

※企業型DCのみの場合は事業主掛金との合算上限(月55,000円)から事業主掛金を差し引いた残りが個人掛金の上限となる。

本記事のシミュレーションでは「企業年金なし・月23,000円(年276,000円)満額」のケースで計算する。企業年金があれば上限が下がるため、節税額もその分少なくなる点に注意してほしい。

なお、iDeCoの掛金は最低月5,000円(1,000円単位)から設定できる。満額でなくても節税効果は比例して得られる。

年収・副業雑所得別 iDeCo節税シミュレーション

以下のシミュレーションは次の前提で計算している。

  • 独身・扶養なし(配偶者控除・扶養控除は考慮しない)
  • 社会保険料控除: 給与収入の約14%(健康保険・厚生年金・雇用保険の合算概算)
  • 基礎控除: 48万円(令和2年改正後)
  • iDeCo掛金: 年276,000円(月23,000円・満額・企業年金なしのケース)
  • 副業雑所得は経費0円(売上=所得)で計算
  • 住民税: 所得割10%一律

実際の税額は医療費控除・住宅ローン控除・生命保険料控除など他の控除によって変わる。傾向把握のための参考試算として活用してほしい。

筆者もふるさと納税の控除上限を整理するついでに課税所得をExcelで組んだとき、iDeCoの27.6万円控除を加えると節税合計がぐっと変わることに気づいた。ふるさと納税と組み合わせると相乗効果もある。

本業年収 副業雑所得 iDeCo前 課税所得(概算) iDeCo後 課税所得 年間節税額(概算) 月換算
300万円 50万円 約162万円(税率5%) 約134万円(5%) 約41,000円 約3,400円
300万円 100万円 約212万円(10%ゾーン突入) 約184万円(5%) 約50,000円 約4,200円
400万円 50万円 約222万円(10%) 約194万円(5%境界) 約55,000円 約4,600円
400万円 100万円 約272万円(10%) 約244万円(10%) 約55,000円 約4,600円
500万円 50万円 約288万円(10%) 約260万円(10%) 約55,000円 約4,600円
500万円 100万円 約338万円(20%ゾーン突入) 約310万円(10%) 約63,000円 約5,300円
600万円 50万円 約354万円(20%) 約326万円(10%境界) 約79,000円 約6,600円
600万円 100万円 約404万円(20%) 約376万円(20%) 約83,000円 約6,900円
700万円 50万円 約424万円(20%) 約396万円(20%) 約83,000円 約6,900円
700万円 100万円 約474万円(20%) 約446万円(20%) 約83,000円 約6,900円

注目すべきポイントが2つある。

①「税率ゾーン跨ぎ」のときに節税額が跳ね上がる。 300万円年収+副業100万円のケースでは、iDeCo控除によって課税所得が212万→184万に下がり、一部が10%→5%ゾーンにシフトする。これが5万円超の節税につながる。同様に500万円年収+副業100万円でも、iDeCo適用後に330万円ラインを下回ることで節税額が約6.3万円に膨らむ。

②年収600〜700万円で副業50万以上があると年8万円超の節税になる。 課税所得がすでに330万円を超えているため、iDeCoの控除額全体が30%(所得税20%+住民税10%)の節税率で効いてくる。年27.6万円の掛金に対して年8.3万円の節税は、実質的な運用利回りで換算しても30%相当だ。

副業がある人のiDeCo確定申告の手順

副業の雑所得が年20万円を超える会社員は確定申告が義務づけられている(国税庁:給与所得者で確定申告が必要な人)。確定申告をする場合、iDeCoの掛金控除も同時に申告できる。

  1. 小規模企業共済等掛金控除証明書を受け取る: iDeCoの運営管理機関(SBI証券・楽天証券など)から、毎年10〜11月頃に郵送で届く。紛失した場合は再発行申請が可能だ。
  2. 確定申告書に記入する: e-Tax(国税庁)または書面申告で「小規模企業共済等掛金控除」欄に掛金の年間合計額を記入する。副業の雑所得も同じ申告書で申告する。
  3. 証明書を添付または入力する: 書面申告なら証明書を添付、e-Taxなら証明書の番号を入力する(原本は5年間保存)。

なお、年の途中でiDeCoに加入した場合はその年の掛金実額のみが控除対象となる。早めに口座開設を済ませると、年内の控除額を最大化できる。

確定申告の期限は翌年3月15日(2026年分は2027年3月15日)。副業収入の計上漏れや申告忘れは無申告加算税・延滞税のリスクがあるため、雑所得の金額も正確に申告してほしい。

iDeCoのデメリット・注意点

節税効果は魅力的だが、iDeCoには以下の制約がある。副業の運転資金として手元に置いておきたい場合は、メリットと天秤にかけて判断してほしい。

  • 原則60歳まで引き出せない: 急な資金需要に対応できない。生活防衛資金を別途確保した上で加入することが前提だ。
  • 受取時にも税金がかかる: 一時金受取なら退職所得控除、年金受取なら公的年金等控除が使えるが、税負担がゼロになるわけではない。長期的な出口シミュレーションも考慮したい。
  • 口座管理手数料がかかる: 運営管理機関によって手数料が異なる。SBI証券・楽天証券・松井証券など主要ネット証券では月額0〜数百円程度だが、国民年金基金連合会への手数料105円/月は全加入者共通でかかる。
  • 元本保証ではない: 投資信託などの運用商品を選んだ場合は損失の可能性がある。リスクを取りたくない場合は元本確保型の定期預金商品を選択できる(ただし利回りは低い)。

FAQ

副業雑所得が20万円以下でもiDeCoの節税効果はある?

節税効果はある。ただし雑所得20万円以下で確定申告が不要な場合は、年末調整のタイミングで会社に「小規模企業共済等掛金控除証明書」を提出すれば所得税の還付が受けられる。住民税は別途、市区町村への申告が必要になるケースがあるため、翌年1月〜3月に住民税申告書を提出するか確認しておこう。

iDeCoの掛金をいくらに設定すればいい?

節税だけを目的にするなら上限(企業年金なし月23,000円)の満額が最も効率的だ。ただし60歳まで引き出せないため、手元流動性とのバランスが重要になる。まず月5,000〜10,000円で始めて、半年後に増額変更する方法も選択できる。掛金の変更は年1回まで可能(iDeCo公式サイト)。

企業型DC(確定拠出年金)がある会社でもiDeCoに加入できる?

2022年10月以降、企業型DC加入者も原則としてiDeCoを掛け持ち利用できるようになった。ただし企業型DCの事業主掛金とiDeCoの掛金の合算上限が月55,000円に設定されているため、事業主掛金が多い会社員はiDeCo上限が小さくなる。詳細は勤務先の人事部またはDCの運営管理機関に確認してほしい。

転職した場合、iDeCoはどうなる?

転職先に企業年金がない場合はそのまま継続できる。企業型DCがある会社に転職した場合は、iDeCoを企業型DCに「移換」する手続きが必要になることもある。転職後60日以内に手続きを行わないと自動的に現金化されて国民年金基金連合会に移管(以後は運用されない状態)になるため、転職後はすぐにiDeCoの運営管理機関に連絡しよう。

確定申告でiDeCoの控除を入れ忘れたらどうなる?

申告期限(翌年3月15日)を過ぎていても「更正の請求」(国税庁)を使えば5年以内なら控除を遡って申請できる。過去5年分を一括で申請して還付を受けることも可能なので、気づいたら早めに手続きしてほしい。

参考文献