「自治体の仕事なんて公務員しかできないのでは?」と思うかもしれないが、2026年現在、状況は大きく変わっている。国の「デジタル田園都市国家構想」や「自治体DX推進計画」により、全国の自治体がデジタル化を急いでおり、外部の副業人材を積極的に募集している。
自分もAI関連の受託で自治体案件を何件か受けてきたが、正直「エンジニアじゃなくても取れる仕事」がかなり多い。ChatGPTで観光パンフレットの多言語版を作る、AIチャットボットの回答データを整備する、業務マニュアルをAIで効率化する——こうした案件が月5万〜20万円の報酬で出ている。この記事では、非エンジニアでも受注できる自治体DX案件の類型と、具体的な応募ルートを整理した。
自治体DX副業の市場が拡大している背景
総務省が2022年に策定し2025年に改定した「自治体DX推進計画 2.0」では、外部デジタル人材の活用が重点施策として明記されている。2026年6月時点で、デジタル庁のデジタル田園都市国家構想交付金を活用した自治体DXプロジェクトは1,700以上の自治体で進行中だ。
背景にあるのは深刻な人材不足。総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、地方公共団体のICT人材は全体の約2%に過ぎない。特に人口5万人以下の小規模自治体ではIT専任職員がゼロというケースも珍しくない。
そこで注目されているのが「副業・兼業人材」の活用だ。フルタイムで採用する余裕がなくても、週10〜15時間の業務委託なら予算が組みやすい。結果として、副業人材マッチングサービスには月5万〜20万円の自治体案件が常時掲載されるようになった。
非エンジニアでも受注できるAI×自治体DX案件5タイプ
「AI案件=プログラミング必須」というイメージは過去のものだ。2026年現在、ノーコード・ローコードツールやChatGPT・Claude等の生成AIを使えれば対応できる案件が増えている。以下が代表的な5タイプだ。
1. 観光パンフレット・広報物の多言語化(月5〜8万円)
インバウンド需要の回復で、観光パンフレットや公式サイトの英語・中国語・韓国語版が必要な自治体は多い。ChatGPTやDeepLを活用した翻訳・ローカライズ業務は、語学力+AI活用スキルがあれば受注できる。納品物はWord/PDF形式が中心で、月2〜4本のペースが一般的だ。
2. AIチャットボットの構築・回答データ整備(月8〜15万円)
住民からの問い合わせ対応にAIチャットボットを導入する自治体が急増している。ここで必要なのはプログラミングではなく、FAQデータの整理・回答文の作成・精度チューニングだ。自分が受けた案件でも、既存のFAQ 300件をClaude APIで整理して回答パターンを生成する作業が中心だった。
3. 業務マニュアル・議事録のAI効率化(月5〜10万円)
紙の業務マニュアルをデジタル化してAI検索できるようにする、会議の録音データをWhisper等で文字起こしして議事録を自動生成する——こうした「AI×事務効率化」案件は非エンジニアの参入障壁が低い。
4. SNS運用・情報発信の企画支援(月5〜12万円)
移住促進や観光PRのためにSNSを強化したい自治体は多いが、「何を投稿すればいいか分からない」という状態が大半だ。AIを使ったコンテンツ企画・画像生成・投稿文作成をパッケージで提案すると受注しやすい。X(旧Twitter)やInstagramの運用代行が多い。
5. データ分析・可視化レポート作成(月10〜20万円)
住民アンケートの集計、観光客の動態データ分析、公共施設の利用実績レポートなど、Excelやスプレッドシート+ChatGPTのAdvanced Data Analysisで対応できる案件がある。BIツール(Tableau、Google Looker Studio)が使えるとさらに単価が上がる。
自治体DX副業案件の探し方|3つの応募ルート
結論から言うと、自治体案件は一般的なクラウドソーシングサイトにはほとんど出ない。以下の3ルートを押さえておこう。
ルート1: 副業人材マッチングサービス(最も案件数が多い)
自治体と副業人材を直接マッチングするサービスが2024年以降に急増した。代表的なサービスは以下の通り。
- Locowork(ロコワーク) — 地方自治体の副業・兼業案件に特化。登録自治体数は2026年時点で200以上
- Another works(複業クラウド) — 自治体との連携実績が豊富。「官公庁・自治体」カテゴリで検索可能
- Skill Shift — みずほ銀行グループが運営。地方企業・自治体のDX人材募集が中心
これらのサービスでは「DX推進」「AI活用」「広報」「SNS運用」などのキーワードで検索すると、該当案件が見つかる。報酬は月額固定が多く、5万〜20万円のレンジが中心だ。
ルート2: 自治体の公式サイト・公募ページ
各自治体が独自に「デジタル人材募集」「副業・兼業人材公募」のページを設けているケースがある。総務省の自治体DXポータルから各自治体の取り組みを確認し、興味のある自治体の公式サイトで募集情報をチェックする方法だ。
公募型は競争率がやや高いが、報酬水準も比較的高い傾向がある。月15〜20万円の案件が見つかることもある。
ルート3: 地域おこし協力隊・プロフェッショナル人材事業
地域おこし協力隊のデジタル枠や、内閣府のプロフェッショナル人材事業経由で自治体DX案件に関わるルートもある。これらは副業というより「業務委託」や「週2日勤務」の形態が多いが、自治体との接点を作る入口として有効だ。
受注率を上げるための提案書の作り方
自治体案件で最も重要なのは「提案書」の質だ。民間のクラウドソーシングと違い、自治体は比較検討のプロセスがしっかりしているため、応募時の提案内容で合否が決まる。
自分がこれまで受注できた案件を振り返ると、以下の3点を押さえた提案書が通りやすい。
- 課題の具体化: 「DXを推進します」ではなく「住民問い合わせ対応の30%をチャットボットで自動化し、職員の電話対応時間を月40時間削減します」のように数値で示す
- AI活用の具体的な手順: 使用するツール名(ChatGPT、Claude、Whisperなど)と作業フローを明記する。自治体担当者はAIに詳しくないことが多いので、「何をどう使うか」を分かりやすく説明する
- 類似実績の提示: 自治体案件の経験がなくても、民間で同様の作業をした実績(例: 社内FAQの整備、翻訳業務、SNS運用)を具体的に示す
なお、自治体案件では「情報セキュリティポリシーへの準拠」を求められることがほとんどだ。個人情報の取り扱いルールや、使用するAIツールのデータ保護方針(例: ChatGPT Enterprise や Claude の SOC2 対応状況)を提案書に盛り込むと信頼感が増す。
自治体DX副業の報酬相場と確定申告の注意点
2026年6月時点の報酬相場をまとめると以下の通りだ。
- 月5〜8万円: 翻訳・ローカライズ、SNS投稿作成、簡易マニュアル作成(週5〜8時間程度)
- 月8〜15万円: チャットボット構築支援、業務効率化コンサル、データ分析(週10〜15時間程度)
- 月15〜20万円: DX推進アドバイザー、複数業務を横断する総合支援(週15〜20時間程度)
契約形態は業務委託(準委任または請負)が主流で、源泉徴収ありの場合とない場合がある。本業の給与所得と合わせて副業所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要だ(国税庁: 給与所得者で確定申告が必要な人)。20万円以下でも住民税の申告は必要なので注意しよう。
また、自治体との業務委託は開業届を出して個人事業主として受けるのが一般的だ。青色申告にすれば最大65万円の控除が受けられるので、継続的に受注するなら早めに届け出ておこう(国税庁: 青色申告の承認申請)。
FAQ
自治体DX副業に資格は必要?
特定の資格は不要だ。ただし、ITパスポートやG検定(ジェネラリスト検定)を持っていると提案書の信頼性が上がる。実務経験やポートフォリオの方が重視される傾向にある。
本業が会社員でも自治体の副業案件を受けられる?
受けられる。多くの自治体案件は「業務委託」契約なので雇用関係にはならない。ただし、本業の就業規則で副業が禁止されていないか事前に確認すること。2026年時点で厚生労働省の副業・兼業ガイドラインは副業を推進する方向だ。
地方在住でなくても応募できる?
フルリモートの案件が過半数だ。特にAI活用・データ分析・SNS運用系の業務はオンライン完結が多い。ただし、月1回程度の現地訪問を求める案件もあるので、募集要項を確認しよう。
報酬の支払いタイミングは?
自治体案件は月末締め翌月末払いが一般的で、民間案件より支払いサイトが長いことがある。初回の入金までに2ヶ月程度かかる場合もあるので、資金繰りに余裕を持っておくとよい。
参考文献
- 自治体DX推進計画 — 総務省
- デジタル田園都市国家構想 — デジタル庁
- 令和6年版 情報通信白書 — 総務省
- 副業・兼業の促進に関するガイドライン — 厚生労働省
- 給与所得者で確定申告が必要な人 — 国税庁