2026年度税制改正大綱(令和8年度)で正式に盛り込まれた「こどもNISA」は、0〜17歳の未成年者が年間60万円・生涯投資枠600万円のつみたて投資枠を使える新制度だ。開始は2027年1月。2023年末に廃止された旧ジュニアNISAの後継として注目されているが、仕組みはかなり異なる。
編集部でも実際に制度概要を読み込み、金融庁の公表資料と主要ネット証券の対応状況を確認した。この記事では、こどもNISAの制度概要・教育資金シミュレーション・口座開設準備・旧ジュニアNISAとの違いを、実数字で整理する。
こどもNISA の制度概要|年60万円・生涯600万円の非課税つみたて枠
こどもNISAの正式な枠組みは以下のとおりだ(2026年6月時点、金融庁公表資料に基づく)。
- 対象年齢: 0歳〜17歳の日本居住者
- 年間投資枠: 60万円(つみたて投資枠のみ。成長投資枠はなし)
- 生涯非課税保有限度額: 600万円(簿価残高方式で管理)
- 非課税保有期間: 無期限
- 対象商品: 成人NISAのつみたて投資枠と同じ(金融庁の基準を満たした投資信託・ETF)
- 口座管理者: 親権者等の法定代理人が代理で運用
- 18歳到達時: 自動的に成人NISA口座へ移管(非課税枠は引き継がれる)
結論から言うと、成人NISAの「子ども版つみたて枠」と理解するのが一番わかりやすい。成長投資枠がない分、個別株やレバレッジ商品は買えず、長期積立に特化した設計になっている。
教育資金シミュレーション|0歳から月5万円×18年積立のケーススタディ
こどもNISAを教育資金として活用する場合、どれくらいの金額になるのか。年間60万円(月5万円)をフルに使い、18年間積立を続けたケースを試算する。
前提条件:
- 毎月5万円を積立(年間60万円 = 年間枠の上限)
- 投資対象: 全世界株式インデックスファンド(信託報酬 年0.05%程度)
- 想定利回り: 年率3%・5%・7%の3パターン
- 積立期間: 18年間(0歳〜17歳)
- 元本合計: 60万円 × 10年 = 600万円(生涯枠の上限に10年目で到達)
注意: 生涯非課税保有限度額は600万円なので、月5万円ペースだと10年目(子どもが9歳)で枠を使い切る。11年目以降は新規の積立ができず、既存の保有分を非課税で運用し続ける形になる。
| 想定利回り(年率) | 元本 | 18年後の評価額 | 運用益(非課税) |
|---|---|---|---|
| 3% | 600万円 | 約836万円 | 約236万円 |
| 5% | 600万円 | 約1,076万円 | 約476万円 |
| 7% | 600万円 | 約1,389万円 | 約789万円 |
年率5%のケースで約1,076万円。日本学生支援機構の「学生生活調査」(2022年度)によると、私立大学4年間の学費(授業料+施設費)は平均約500〜600万円、国公立でも約250万円前後。年率5%で運用できれば、私立大学4年間の学費を十分にカバーできる水準になる。
ただし、投資である以上マイナスになる年もある。教育資金は使う時期が決まっているため、大学入学の2〜3年前から段階的に利確(売却)して現金化するルールを決めておくのが現実的だ。
月3万円・月1万円の場合はどうなる?|無理のない積立プラン
月5万円は年間枠の上限だが、家計の余裕に応じて少額から始めても十分効果がある。月3万円(年36万円)と月1万円(年12万円)のケースも試算した(年率5%想定)。
| 毎月の積立額 | 年間投資額 | 枠を使い切る年数 | 元本 | 18年後の評価額(年率5%) |
|---|---|---|---|---|
| 月5万円 | 60万円 | 10年 | 600万円 | 約1,076万円 |
| 月3万円 | 36万円 | 16年8ヶ月 | 600万円 | 約856万円 |
| 月1万円 | 12万円 | 使い切らない | 216万円 | 約310万円 |
月3万円でも18年後に約856万円。国公立大学4年間の学費は余裕でカバーできる。月1万円でも約310万円になるため、入学金+初年度の学費程度は確保できる計算だ。
つまり、「月5万円出せないから意味がない」ということはまったくない。月1万円からでも18年という時間が味方してくれる。
12歳以降の払い出しルール|途中引き出しの条件
こどもNISAには旧ジュニアNISAにあった「18歳まで原則引き出し不可」の制限が大幅に緩和されている。2026年度税制改正大綱の記載によると、以下のルールが示されている。
- 12歳未満: 原則として払い出し不可(災害等の特例を除く)
- 12歳以上: 払い出し可能。ただし、払い出した分の非課税保有限度額は復活しない
- 18歳到達時: 成人NISAへ自動移管。成人NISAの生涯非課税保有限度額(1,800万円)とは別枠で管理される
12歳から引き出せるということは、中学受験や高校入学の費用にも充てられるということだ。ただし、一度引き出した枠は復活しないため、「大学費用のために残しておく」か「中学・高校で一部使う」かは家庭のライフプランで判断する必要がある。
旧ジュニアNISAとの違い|こどもNISAは何が変わったのか
旧ジュニアNISA(2016年〜2023年)との違いを整理する。
| 項目 | 旧ジュニアNISA | こどもNISA(2027年〜) |
|---|---|---|
| 年間投資枠 | 80万円 | 60万円 |
| 非課税保有期間 | 5年間 | 無期限 |
| 生涯非課税枠 | 400万円(80万円×5年) | 600万円 |
| 対象商品 | 上場株式・投資信託等 | つみたて投資枠対象の投資信託・ETFのみ |
| 途中引き出し | 18歳まで原則不可(全額払い出しのみ) | 12歳以上で一部払い出し可 |
| 口座廃止 | 2023年末で新規買付終了 | 2027年1月開始 |
| 18歳到達後 | 一般NISA口座へ移管 | 成人NISA口座へ移管(別枠) |
最大の改善点は非課税保有期間が無期限になったことと、12歳以上で途中引き出しが可能になったこと。旧ジュニアNISAは5年の非課税期間と18歳までの引き出し制限がネックで利用率が低かった(日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査」によると、ジュニアNISAの口座数は2023年9月末時点で約126万口座にとどまった)。こどもNISAはこれらの課題を解消した設計になっている。
2027年1月の開始までに準備すべきこと
制度開始は2027年1月だが、今から準備できることがある。
1. 証券口座の選定と親の口座開設
こどもNISA口座を開設するには、親権者が同じ証券会社にNISA口座を持っている必要がある(旧ジュニアNISAと同様の見込み)。まだ成人NISAの口座を開設していない場合は、先に親の口座を作っておこう。
主要ネット証券のこどもNISA対応状況は2026年6月時点で公式発表されていないが、SBI証券・楽天証券・マネックス証券など大手は対応するとみられている(各社の公式サイトで最新情報を確認してほしい)。
2. 毎月の積立額を決める
家計の中から無理なく拠出できる金額を決める。上限は月5万円(年60万円)だが、月1万円からでも十分効果がある。児童手当(0〜2歳: 月1.5万円、3歳〜中学: 月1万円、高校: 月1万円。第3子以降は月3万円。こども家庭庁「児童手当」参照)をそのまま積立に回すのも現実的な選択肢だ。
3. 投資先の候補を絞る
こどもNISAのつみたて投資枠で購入できるのは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託・ETF。教育資金という目的を考えると、以下のような低コストのインデックスファンドが候補になる。
- 全世界株式(オール・カントリー)型: eMAXIS Slim 全世界株式、楽天・オールカントリー等
- 先進国株式型: eMAXIS Slim 先進国株式等
- バランス型(株式+債券): リスクを抑えたい場合
18年という長期運用なら全世界株式型が王道だが、使う時期が近づいたら債券比率を上げてリスクを下げる「ターゲットイヤー」的な考え方も有効だ。
4. 旧ジュニアNISAの残高を確認する
旧ジュニアNISAで保有中の資産がある場合、非課税で保有を継続できる(18歳まで)。こどもNISAの生涯枠600万円とは別枠のため、両方を活用できる。旧ジュニアNISAの残高を証券会社のマイページで確認しておこう。
学資保険と比較してどちらが有利か
教育資金の準備手段として学資保険と比較されることが多い。2026年6月時点の一般的な学資保険の返戻率は約103〜108%程度(ソニー生命「学資保険」等の公式シミュレーション参照)。
| 比較項目 | こどもNISA | 学資保険 |
|---|---|---|
| リターン | 運用次第(年率3〜7%も可能、元本割れリスクあり) | 返戻率103〜108%程度(元本保証に近い) |
| 税制優遇 | 運用益が非課税 | 一時所得として課税(50万円控除あり) |
| 流動性 | 12歳以上で一部払い出し可 | 途中解約は元本割れのリスク |
| 万が一の保障 | なし | 親が死亡時に保険料免除(払込免除特約) |
要するに、「増やす」ならこどもNISA、「守る+万が一の保障」なら学資保険、という使い分けが基本だ。両方を組み合わせるのも現実的な選択肢になる。こどもNISAで積立しつつ、親の死亡リスクには掛け捨ての生命保険でカバーする、という設計もある。
FAQ
こどもNISAは何歳から口座を開設できる?
0歳から開設できる。出生届を出してマイナンバーが付番された時点で申し込み可能になる見込みだ。親権者が同じ証券会社にNISA口座を持っていることが条件となる。
児童手当をそのまま積立に回せる?
可能だ。2024年10月から児童手当は高校生まで延長・所得制限撤廃されている。月1万〜1.5万円の児童手当をこどもNISAの積立に充てれば、家計の追加負担なしで教育資金を準備できる。
子どもが18歳になったらどうなる?
18歳到達時に自動的に成人NISA口座へ移管される。こどもNISAで保有していた資産の非課税保有は継続され、成人NISAの生涯非課税保有限度額(1,800万円)とは別枠で管理される。
旧ジュニアNISAの残高があるが、こどもNISAに移管できる?
旧ジュニアNISAからこどもNISAへの直接移管は現時点で想定されていない。旧ジュニアNISAの資産は18歳まで非課税で保有を継続できる。こどもNISAの生涯枠600万円とは別枠なので、両方を並行して活用可能だ。
元本割れしたらどうする?
投資信託は元本保証ではないため、評価額が元本を下回る時期はある。ただし、全世界株式インデックスの過去データでは、15年以上の保有期間では元本割れの確率が大幅に低下する。教育資金として使う2〜3年前から段階的に売却し、現金化しておくことでリスクを軽減できる。
参考文献
- 金融庁「NISAの概要」 — NISA制度の公式解説ページ
- 財務省「税制改正の概要」 — 各年度の税制改正大綱・法案
- 日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査」 — NISA口座数の統計データ
- こども家庭庁「児童手当」 — 児童手当の支給額・条件
- 日本学生支援機構「学生生活調査」 — 大学の学費・生活費の統計