2026年8月現在、個人向け国債は元本割れなし・購入額1万円からという条件で、銀行普通預金(大手行で年0.1%前後)を大幅に上回る利率を提供している。日本銀行が2024年以降に利上げを進めた結果、変動10年型を中心に利率が上昇しており、"守りながら増やす"選択肢として注目が高まっている。本記事では変動10年・固定5年・固定3年の仕組みと利率の読み方、中途換金のルール、口座開設から購入完了までの全手順を解説する。
個人向け国債の3種類と利率の仕組み
個人向け国債は財務省が発行する日本国政府の債券で、個人のみが購入できる。3種類の商品があり、それぞれ満期・利率タイプが異なる。
| 種類 | 満期 | 利率タイプ | 最低金利保証 |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 10年 | 変動(半年ごとに改定) | 年0.05% |
| 固定5年 | 5年 | 固定(購入時に確定) | 年0.05% |
| 固定3年 | 3年 | 固定(購入時に確定) | 年0.05% |
変動10年の利率計算式
変動10年の適用利率は「基準金利 × 0.66」で計算される。基準金利とは、利払い月の前月に行われた10年固定利付国債の入札で決まる平均落札利回りのことだ。半年ごとに見直されるため、日銀が利上げを続ける局面では利率が自動的に上昇する。
2026年8月発行分(第173回)の適用利率については、発行月に財務省の個人向け国債公式ページで確認できる。2025年夏時点では変動10年の利率は年0.61%(税引前)で、その後の日銀利上げにより2026年には上昇している可能性が高い。購入前に必ず最新の適用利率を同ページで確認すること。
固定5年・固定3年は購入時に利率が確定
固定型は申し込み時点の利率が満期まで変わらない。金利上昇局面では変動型に比べて不利になる場合があるが、将来の金利低下を心配せず計画を立てやすい点がメリットだ。固定3年は3種類の中で最も利率が低く設定されることが多い。
中途換金のルールと実際の損得
個人向け国債は「元本保証」だが、換金タイミングによって手取り額が変わる。結論から言うと、1年以上保有すれば元本割れなく換金できる。
換金できない期間がある
購入後1年間は原則として中途換金できない。これは個人向け国債の大きな制約で、急に現金が必要になっても動かせない期間があることを念頭に置く必要がある。緊急資金は別口座に確保した上で投資することが重要だ。
1年経過後の換金コスト
1年を過ぎれば任意のタイミングで換金できる。ただし「直前2回分の利子(税引前)」相当額が差し引かれる。たとえば変動10年を年1.0%で保有していた場合、1回の利払いは0.5%相当(半年分)。直前2回分なので1.0%分が差し引かれるイメージだ。
元本そのものは削られないため、「損をする」わけではなく「利子の一部が戻ってくるだけ」という整理が正確だ。短期での換金を想定しているなら固定3年のほうが換金コストは小さい。
災害時の特例換金
大規模な自然災害や発行機関(財務省)が認めた特別な事情がある場合は、1年未満でも換金が認められる場合がある。詳細は財務省の規定を参照。
購入できる金融機関一覧
個人向け国債はほぼすべての大手証券会社・銀行・ゆうちょ銀行で購入できる。手数料は法律で販売会社への手数料が国が負担する仕組みのため、購入者側のコストは一切かからない。
ネット証券(スマホ・PCで完結)
- SBI証券 — 口座数業界最大級。スマホアプリで購入申し込みまで完結。SBI証券公式
- 楽天証券 — 楽天銀行との連携が強力。楽天IDがあれば開設が速い。楽天証券公式
- 松井証券 — シンプルなUIで初心者に扱いやすい。
- マネックス証券 — 国債関連の情報提供が充実。
大手対面証券
- 野村證券・大和証券・SMBC日興証券など。担当者がついて手続きを支援してくれるが、店舗に出向く手間がかかる。
銀行・ゆうちょ銀行
- 三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の三大メガバンク。
- ゆうちょ銀行・郵便局 — 全国2万以上の窓口があり、地方在住者にもアクセスしやすい。
どの機関で買っても利率・元本保証の条件は同じ。自分がすでに口座を持っている金融機関から始めるのが最もスムーズだ。
最初の1本を買うまでの全手順
ここでは手続きをネット証券(SBI証券を例)で進める場合のステップを説明する。他の金融機関でもおおむね同じ流れだ。
STEP 1: 口座開設(すでにあれば不要)
SBI証券の口座を持っていない場合は公式サイトから申し込む。必要なものはマイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)と銀行口座。オンライン完結で最短翌営業日に開設できる。
STEP 2: 発行スケジュールと利率を確認する
個人向け国債は毎月発行されるが、募集期間(申込受付期間)は月の前半〜中旬に限られる。財務省の発行スケジュール一覧で次回の募集開始日を確認し、購入したい種類(変動10年/固定5年/固定3年)の利率を調べる。
STEP 3: 証券口座に資金を入金する
購入金額分を証券口座に移す。最低購入単位は1万円で、以降は1万円単位で追加できる。上限は1回の発行回次につき1人3億円(三者合計)。
STEP 4: 募集期間中に申し込む
SBI証券の場合、ログイン後に「債券」→「個人向け国債」から購入する種類と金額を選んで申し込む。手続きは5分程度で完了する。申込受付期間外では購入できないため、スケジュールを事前に押さえておくこと。
STEP 5: 受渡日に国債が口座へ届く
申し込み完了後、受渡日(発行日)に購入した国債が保有口座に反映される。その後は半年ごとに利子が入金される(源泉徴収後)。確定申告は基本不要で、NISA口座以外では利子に20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)が源泉徴収される。
銀行定期預金との比較でわかること
2026年8月時点で大手都市銀行の普通預金は年0.1%前後、定期預金(1年)でも年0.1〜0.3%台が中心だ(各行の公式金利表より)。個人向け国債 変動10年がこれを大きく上回る利率であれば、安全性の面でも預金保険制度(1000万円まで)と同等以上の国家保証があることを考えると、比較的有力な選択肢になる。
ただし、個人向け国債には「購入後1年間換金できない」制約がある。生活防衛費(生活費3〜6ヶ月分)は普通預金など即時引き出し可能な形で確保した上で、余剰資金を個人向け国債に回す組み合わせが現実的だ。
FAQ
個人向け国債は途中で価格が下がることはある?
二次市場(市場売却)で売るのではなく、財務省に換金(中途換金)する仕組みのため、元本が市場価格によって下がることはない。換金時は元本から「直前2回分の利子(税引前)相当額」が差し引かれるだけで、元本そのものは保全される。
NISAで個人向け国債は買えますか?
個人向け国債はNISAの対象外となっている(2026年8月時点)。利子にかかる20.315%の源泉徴収は回避できない。新NISA枠は株式・投資信託に使い、個人向け国債は特定口座または一般口座で購入するのが一般的な運用だ。
変動10年と固定5年、どちらを選ぶべき?
今後も日銀が利上げを継続すると見込むなら変動10年が有利になりやすい。一方で現在の利率を確定させて計画的に運用したいなら固定5年を選ぶ判断もある。ただし10年という長い拘束期間が気になるなら固定3年から始め、利率や制度への理解を深めてから変動10年に移行するステップアップ戦略も有効だ。
複数種類を同時に購入できますか?
可能だ。1回の発行回次で変動10年・固定5年・固定3年を同時に申し込める。分散して保有することで換金タイミングの柔軟性が上がる。
外国人でも購入できますか?
個人向け国債は日本在住の個人であれば国籍を問わず購入できる。ただし、購入のための金融機関口座開設時に在留資格の確認書類が必要になる場合がある。
参考文献
- 個人向け国債(財務省公式) — 財務省, 最新発行情報・利率・発行スケジュール
- 個人向け国債 発行年次一覧(財務省) — 財務省, 過去・今後の発行スケジュール
- 金融政策の概要(日本銀行) — 日本銀行, 政策金利・金融政策決定会合の情報
- 個人向け国債 購入ページ(SBI証券) — SBI証券, 購入申し込み・利率確認
- 債券・個人向け国債(楽天証券) — 楽天証券, 購入申し込み