2026年3月に成立した令和8年度税制改正により、NISAのつみたて投資枠で債券中心の投資信託が購入できるようになる。施行は2027年1月1日。これまで「株式が主たる投資対象」に限定されていたつみたて枠に、債券ファンドやバランス型投信が加わることで、守りを意識したポートフォリオ設計がNISA内で完結する時代が来る。

編集部でも「株100%で積み立ててきたけど、これからどうする?」という声が多い。結論から言うと、20代・30代は慌てて変える必要はないが、50代以降で出口が近い人ほど今回の改正はインパクトが大きい。本記事では改正の中身を整理し、年代別の配分モデルを具体的な数字で提示する。

2026年度NISA改正で何が変わったのか

令和8年度税制改正大綱(2025年12月19日与党公表、2026年3月31日成立)で決まったNISA関連の主な変更点は以下の3つだ。

  • つみたて投資枠の対象拡大: 投資対象が「主に株式に投資するもの」から「株式または公社債に投資するもの」に変更(金融庁 令和8年度税制改正について
  • 指定インデックスの追加: つみたて枠の指定インデックスに「読売株価指数(読売333)」「JPXプライム150指数」が追加され、国内株価指数は計6本に
  • こどもNISA(仮称)の創設: 18歳未満にもつみたて投資枠を開放(年間枠は別途設定)

この中で資産配分に直結するのが、1つ目の「債券ファンド解禁」だ。従来のつみたて枠では、株式が50%超を占めるファンドしか選べなかった。2027年1月以降は、国内債券インデックスファンドや外国債券インデックスファンド単体でも、つみたて枠で積み立て可能になる(MONEY PLUS「2027年、新NISAのつみたて投資枠で『債券』が解禁に」)。

つみたて枠で債券投信が買える意味

つまり、つみたて枠だけで国内株式・外国株式・国内債券・外国債券の4資産を個別のインデックスファンドで組み合わせられるようになる。これまでは「つみたて枠=株式ファンドのみ」「成長投資枠で債券ファンドを補完」という二段構えが必要だったが、その制約がなくなる。

具体的なメリットを整理する。

  • 年間投資枠の使い分けが柔軟に: 成長投資枠(年240万円)を個別株やREITに使いつつ、つみたて枠(年120万円)で債券を含むバランス運用ができる
  • 低リスク志向の投資家がNISAに参入しやすくなる: 「株式は怖い」と感じていた層にも、債券中心のファンドでNISAの非課税メリットを活用する道が開ける
  • ポートフォリオのリバランスがNISA内で完結: 株式偏重の配分を修正したいとき、つみたて枠内で債券ファンドの比率を上げるだけで調整可能

一方、注意点もある。

  • 債券ファンドの期待リターンは株式より低い: 過去20年の実績では、国内債券インデックスの年平均リターンは1〜2%程度。株式インデックス(年平均5〜7%)と比べると資産の成長スピードは緩やかだ
  • 金利上昇局面では債券価格が下落する: 日銀の利上げが続く局面では、既発債の価格が下がりファンドの基準価額もマイナスになり得る。2024〜2025年に国内債券ファンドが一時的にマイナスリターンとなった事実は記憶に新しい
  • 非課税メリットはリターンが大きいほど効く: NISA枠は有限なので、「非課税で運用するなら期待リターンの高い資産を優先すべき」という考え方も根強い

年代別ポートフォリオ設計モデル

「年齢=債券比率」という古典的なルールがある。40歳なら40%を債券に、60%を株式に配分するという考え方だ。これを日本のNISA環境に合わせてアレンジした年代別モデルを提示する。あくまで目安であり、個人のリスク許容度や資産状況に応じて調整してほしい。

20代〜30代前半: 株式重視型(債券0〜10%)

運用期間が30年以上ある世代は、短期の値動きを吸収できる。つみたて枠は全世界株式(オルカン)やS&P500連動ファンドに集中し、債券は入れなくてもよい。

  • 国内株式: 10〜15%
  • 外国株式: 85〜90%
  • 債券: 0〜10%

この世代が債券を入れるメリットは小さい。非課税枠は限られているため、期待リターンの高い株式に振り切るのが合理的だ。

30代後半〜40代: バランス型(債券10〜30%)

住宅ローンや教育費など大きな支出が控える時期。暴落時に「あと10年で使うお金が半分になった」とパニックにならないよう、債券で緩衝材を入れ始めるタイミングだ。

  • 国内株式: 10〜15%
  • 外国株式: 55〜65%
  • 国内債券: 10〜15%
  • 外国債券: 10〜15%

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは国内株式25%・外国株式25%・国内債券25%・外国債券25%の均等配分だ(GPIF公式サイト)。40代でGPIF型に近づけていくイメージを持つと分かりやすい。

50代: 守り重視型(債券30〜50%)

退職金の受取りや年金開始が視野に入る世代。「増やす」より「減らさない」が優先される。つみたて枠の新規積立分を債券ファンドに切り替えるだけで、ポートフォリオ全体の債券比率を自然に引き上げられる。

  • 国内株式: 10%
  • 外国株式: 30〜40%
  • 国内債券: 20〜30%
  • 外国債券: 15〜20%

60代以降: 安定運用型(債券50〜70%)

取り崩しフェーズに入る世代。値動きの大きい資産を多く持つと、下落時に売却を迫られる「収益率配列リスク」が顕在化する。債券中心に移行しつつ、インフレ対策として株式を20〜30%残すのが現実的だ。

  • 国内株式: 10%
  • 外国株式: 15〜20%
  • 国内債券: 30〜40%
  • 外国債券: 20〜25%

具体的な対応ステップ

2027年1月の施行に向けて、今からできる準備を3つにまとめた。

ステップ1: 現在のポートフォリオを棚卸しする

証券口座にログインし、つみたて枠・成長投資枠それぞれの保有銘柄と評価額を一覧にする。株式100%になっている人が多いはずだ。楽天証券やSBI証券のマイページでは資産クラス別の円グラフが確認できる。

ステップ2: 目標配分を決める

上記の年代別モデルを参考に、自分のリスク許容度に合った株式・債券の比率を決める。ポイントは「暴落で30〜40%下落しても生活に支障がない金額を株式に充てる」ことだ。

ステップ3: 2027年1月以降の積立設定を変更する

既に積み立てている株式ファンドを売却する必要はない。新規の積立分を債券ファンドに振り替えるだけで、時間をかけて目標配分に近づけられる。急な売却はタイミングリスクを伴うため、「新規資金で調整」が基本戦略だ。

債券ファンド選びの注意点

2027年1月以降、つみたて枠に追加される債券ファンドの具体的なラインナップは、金融庁の届出リストで確認する必要がある(金融庁 つみたて投資枠対象商品)。選ぶ際のチェックポイントは以下の通りだ。

  • 信託報酬: つみたて枠の条件として信託報酬の上限が設定される見込み。0.5%以下を目安に選ぶ
  • 為替ヘッジの有無: 外国債券ファンドは「為替ヘッジあり」と「なし」で値動きが大きく異なる。円安局面ではヘッジなし有利、円高局面ではヘッジあり有利。判断が難しければ、国内債券ファンドから始めるのも一手
  • デュレーション(平均残存期間): 長いほど金利変動の影響を受けやすい。金利上昇が続く局面では短期債ファンドの方が価格変動が小さい
  • 純資産総額: 50億円以上を目安に。規模が小さいファンドは繰上償還(強制解約)のリスクがある

FAQ

つみたて枠の債券ファンドはいつから買えるようになる?

令和8年度税制改正に基づき、2027年1月1日から施行される予定です。2026年中は従来通り株式中心のファンドのみが対象です。

すでに積み立てている株式ファンドは売却すべき?

売却する必要はありません。既存の積立はそのまま継続し、2027年1月以降の新規積立分で債券ファンドを追加するのが合理的です。

債券ファンドだけで積み立てるのはアリ?

制度上は可能になりますが、長期のインフレ対策としては株式の比率をゼロにするのはリスクがあります。少なくとも20〜30%は株式を残すことを検討してください。

成長投資枠とつみたて枠、債券ファンドはどちらで買うべき?

つみたて枠は年120万円、成長投資枠は年240万円です。つみたて枠で債券ファンドを積み立て、成長投資枠を個別株やREITなど他の資産に使う、という枠の使い分けが柔軟になります。

GPIF(年金積立金)の配分をそのまま真似していい?

GPIFの均等4分割(国内株25%・外国株25%・国内債25%・外国債25%)は参考になりますが、GPIFは数十兆円規模の運用で個人とは前提が異なります。年代やリスク許容度に合わせて調整してください。

参考文献