「新NISAで積み立て始めたのに、含み損が止まらない」「画面を見るたびに胃が痛い」——2025年の関税ショック以降、Xではこうした声が急増しました。

結論から言うと、過去の暴落で-50%まで落ちたオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)でも、積立を継続した人は例外なく回復しています。本記事では、過去の暴落と回復の実データ、積立継続vs売却のシミュレーション、そして狼狽売りを防ぐ5つのメンタルフレームワークを紹介します。

筆者自身、副業で貯めた資金を2020年のコロナショック直前に一括投資し、評価額が一時-35%になった経験があります。あのとき売らずに済んだのは、データに基づく判断軸があったからです。

過去の暴落からオルカンはどう回復したか|実データで振り返る

まず、MSCI ACWI(オルカンのベンチマーク指数)の過去の主要な暴落と回復期間を確認しましょう。

主要な暴落の最大下落率と回復期間(2026年5月時点の振り返り):

  • リーマンショック(2008年9月〜2009年3月): 最大下落率 約-54%。回復まで約4年5ヶ月(2013年2月頃に高値回復)。出典: MSCI ACWI Index Factsheet
  • コロナショック(2020年2月〜3月): 最大下落率 約-34%。回復まで約5ヶ月(2020年8月に高値回復)。
  • 2022年インフレ・利上げ局面: 最大下落率 約-26%。回復まで約1年半(2024年1月頃に回復)。
  • 2025年4月 関税ショック: 最大下落率 約-18%(円建て基準)。2025年5月時点で回復傾向。

つまり、過去最悪のリーマンショックでも約4年半で回復しています。新NISAの非課税期間は無期限ですから、4〜5年の回復期間は十分に許容範囲です。

重要なのは「回復しなかった暴落は、世界株式インデックスの歴史上ゼロ」という事実です。個別株と違い、全世界に分散されたインデックスは構成銘柄が自動で入れ替わるため、世界経済が成長する限り回復する構造になっています。

積立継続 vs 一括売却|シミュレーションで比べる

「暴落が来たら売って、底で買い直せばいい」と考える人もいますが、これは実行がほぼ不可能です。シミュレーションで確認しましょう。

前提条件: 月3万円をオルカンに積立投資。リーマンショック級(-50%)の暴落が発生したケースを想定。年平均リターン7%(MSCI ACWI の過去30年実績に基づく)。

ケースA: 暴落中も積立継続

  • 暴落時に安い基準価額で多くの口数を購入(ドルコスト平均法の効果)
  • 回復後の評価額は、暴落がなかった場合を上回ることが多い
  • 10年後の評価額: 約519万円(元本360万円)

ケースB: 暴落時に全売却 → 回復を確認して再投資

  • 「底を確認してから」再投資すると、実際には回復の初動を逃す
  • 過去データでは、暴落後の急反発は数日〜数週間に集中する(J.P.Morgan Guide to the Markets参照)
  • ベスト10日を逃した場合、リターンが半減するというデータもある
  • 10年後の評価額: 約380万円前後(タイミングにより大幅に変動)

要するに、暴落時に売却して底で買い戻す「完璧なタイミング投資」は、プロのファンドマネージャーでも一貫して成功できないのが現実です。「今は売るべきか」と迷っている時点で、積立を続ける方が期待値は高いと言えます。

狼狽売りを防ぐ5つのメンタルフレームワーク

データを知っていても、含み損を目の前にすると感情が先に動きます。以下の5つの考え方を「暴落前に」インストールしておくことが大切です。

1. 「含み損」ではなく「口数が安く買えるセール期間」と捉える

積立投資の場合、基準価額が下がるほど同じ金額で多くの口数を買えます。スーパーの半額セールに怒る人はいません。20年後に使うお金を今安く仕入れている、と視点を切り替えましょう。

2. 「評価額」ではなく「口数(保有量)」を見る

証券口座を開くと、真っ赤な評価損益が目に飛び込んできます。しかし、積立投資家にとって本当に重要なのは保有口数が毎月増えているかどうかです。口数が増えている限り、将来の回復時のリターンは拡大します。SBI証券や楽天証券の口座画面では、評価額の横に保有口数も表示されています。そちらを見る習慣をつけましょう。

3. 「投資の時間軸」を紙に書いて壁に貼る

新NISAのつみたて投資枠は非課税期間が無期限です。あなたの投資期間が10年以上あるなら、今の暴落は「途中経過」に過ぎません。「このお金を使うのは20XX年」と紙に書いて貼っておくだけで、短期の値動きへの耐性は上がります。金融庁のつみたてNISA早わかりガイドブックでも、20年以上の保有で元本割れリスクがほぼゼロになるデータが示されています。

4. 「暴落ノート」をつけて感情を外部化する

暴落時の不安は、頭の中でループするから増幅します。「今日の含み損:○万円」「感じていること:○○」「売りたい理由:○○」「売らない理由:○○」をメモ帳やスマホのノートに書き出してみてください。感情を文字にすると客観視できて、衝動的な売却を防げます。

5. 証券口座のログイン頻度を「週1回」に減らす

毎日口座を確認するほど、損失回避バイアス(損失は利益の2〜2.5倍の心理的インパクトがある)に振り回されます。行動経済学者のリチャード・セイラーが推奨するように、長期投資家は口座を見る頻度を意図的に下げることが合理的です。積立設定が完了しているなら、口座は週1回、あるいは月1回の確認で十分です。

「それでも不安」なときにやるべき3つの実務チェック

メンタルフレームワークだけでは心が落ち着かないこともあります。その場合は、以下の「実務面」を点検しましょう。

1. 生活防衛資金は確保できているか?

一般的に、生活費の6ヶ月〜1年分の現金を投資に回さず持っておくのが基本です。これがあれば「暴落中に生活費のために売却する」という最悪のシナリオを回避できます。もし生活防衛資金が不十分なら、積立金額を一時的に減額して現金を確保するのは合理的な判断です。

2. リスク許容度と積立金額は合っているか?

含み損で眠れないなら、それはリスクを取りすぎているサインかもしれません。月の積立額を、「全額失っても生活に影響がない金額」に設定し直すことは、撤退ではなく適正化です。

3. 投資先の中身を理解しているか?

オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)は約50カ国・約2,700銘柄に分散投資する商品です(三菱UFJアセットマネジメント公式ページ、2026年5月時点)。Apple、Microsoft、トヨタ、サムスンなど、世界の時価総額上位企業が自動で組み入れられます。「何に投資しているか分からない」不安がある人は、目論見書の上位10銘柄を一度確認してみてください。

暴落は「ふるい」——残った人だけがリターンを受け取る

最後にひとつ、厳しいですが重要な事実を伝えます。

長期投資のリターンは、暴落に耐えた人だけが受け取れます。株式市場のリスクプレミアム(預金より高いリターン)は、まさに「暴落に耐えるストレス」の対価です。

2008年のリーマンショック後、S&P500は2009年3月の底値から2025年までに約10倍になりました。しかし、その恩恵を受けたのは暴落中に売らなかった投資家だけです。

新NISAで初めて投資を始めた方にとって、今の含み損は「最初の試練」です。ここを乗り越えれば、次の暴落ではもっと冷静に対処できるようになります。暴落とは、投資家としての経験値を積む最大のチャンスでもあるのです。

FAQ

オルカンの含み損はいつ回復しますか?

過去の実績では、最悪のリーマンショック級で約4年半、コロナショックでは約5ヶ月で回復しています。時期の予測は不可能ですが、世界株式インデックスが回復しなかったケースは歴史上ありません。

含み損が-30%を超えたら損切りすべきですか?

積立投資の場合、損切りは通常不要です。-30%は過去に何度も起きており、すべて回復しています。ただし生活防衛資金が不足している場合は、生活費確保を優先してください。

暴落時にスポット買い(追加投資)すべきですか?

余裕資金があるなら合理的な選択です。ただし「底値を狙う」のではなく、通常の積立に加えて少額ずつ追加する方が精神的に楽です。無理に追加投資する必要はなく、通常の積立継続だけで十分です。

新NISAの含み損は確定申告に影響しますか?

NISA口座内の損益は非課税のため、確定申告には影響しません。ただしNISA口座の損失は、特定口座の利益と損益通算(赤字を他の利益から差し引くこと)できない点に注意してください(国税庁 NISA Q&A参照)。

暴落中に積立金額を減らすのはアリですか?

生活が苦しいなら減額は合理的な判断です。大切なのは「ゼロにしない(=完全に撤退しない)」こと。月1,000円でも継続することで、市場の回復時にポジションを保持できます。

参考文献