転売・せどり副業で売上が年間20万円を超えたら、確定申告は避けて通れない。「何を経費にできるか」「事業所得と雑所得、どちらで申告すべきか」——初めてだと迷うポイントが多いが、ルールは思ったよりシンプルだ。本記事では、仕入れ費・送料・梱包材・ツール代の経費計上実例と、年間売上別の所得区分選択基準を整理し、申告の全手順を示す。
筆者はせどり全盛期に月商400万円まで積み上げた経験があるが、在庫が膨らんで撤退した苦い過去がある。経費と在庫管理の甘さがどれほど収益を削るか、身をもって知っている。だからこそ、最初から正しい経費管理と申告習慣をつけてほしい。
まず確認:確定申告が必要になるのはいつ?
給与所得のある会社員の場合、副業の所得(売上 − 経費)が年間20万円を超えた年は確定申告が必要だ(所得税法第121条)。「売上」ではなく「所得(利益)」が基準な点がポイントで、仕入れ費や送料をきちんと記録することが申告義務の有無を判断する第一歩になる。
20万円以下でも住民税の申告が別途必要なケースがあるので注意が必要だ。申告期限は毎年2月16日〜3月15日(前年分)で、e-Taxを使えばオンラインで完結できる。
事業所得と雑所得、年間売上別の選択基準
転売・せどり副業は「事業所得」か「雑所得」のどちらかで申告する。この選択が税負担と青色申告特典に大きく影響する。
2022年通達改正後のルール(2026年4月現在)
2022年(令和4年)分の申告から、国税庁の通達が明確化された。判断のポイントは「帳簿書類を作成・保存しているかどうか」だ。
| 年間副業収入 | 帳簿あり | 帳簿なし |
|---|---|---|
| 300万円超 | 事業所得(主張可能) | 事業所得(主張可能) |
| 300万円以下 | 事業所得(主張可能) | 原則 雑所得 |
つまり、帳簿(収支記録)を付けていれば、売上300万円以下でも事業所得として申告できる可能性がある。ただし、継続性・反復性・利益追求の意思なども総合的に判断されるため、副業歴が浅い初年度は雑所得からスタートし、翌年度以降に青色申告へ移行する方法が現実的だ。
事業所得と雑所得の主な違い
- 事業所得のメリット:青色申告特別控除(最大65万円)、損益通算(他の所得との赤字相殺)、3年間の赤字繰り越しが利用可能
- 事業所得の条件:開業届と青色申告承認申請書の事前提出が必要(申告する年の3月15日または開業から2か月以内)
- 雑所得のメリット:手続きがシンプル。帳簿の義務はゆるく、初申告に向いている
経費にできるもの・できないもの|転売・せどり実例
経費計上のポイントは「転売事業に直接関係するかどうか」だ。個人消費と混在する支出は按分が必要になる。
経費にできる主な項目(実例付き)
- 仕入れ費用:売上に対応した商品の仕入れ値。在庫のまま年をまたいだ分は「期末在庫」として翌年以降に計上する点に注意
- 送料:出品・発送にかかる送料実費。らくらくメルカリ便・ゆうパック・ヤマト運輸など
- 梱包材費:ダンボール・プチプチ・テープ・ラベルシール。ホームセンターでの購入レシートを保管しよう
- フリマアプリ・EC手数料:メルカリは販売額の10%(2026年4月現在)、Amazon出品は月額4,900円(大口)または1件100円(小口)など。メルカリ公式ヘルプで最新手数料を確認すること
- ツール・アプリ代:Keepa(Amazonランキング追跡、月約1,800円)・プライスター(価格改定、月約5,000円)などのせどりツール代は全額経費になる
- 交通費:仕入れのための移動費(電車・バス・ガソリン代・駐車場代)。プライベートとの兼用は業務割合で按分
- 通信費:副業専用スマホは全額、兼用の場合は業務使用割合で按分(例:仕事6割なら6割)
- 古物商許可申請費用:都道府県公安委員会への申請手数料(東京都は19,000円、2026年4月現在。警視庁「古物商の許可申請」参照)
経費にできないもの(注意点)
- 年末時点で在庫として残っている商品の仕入れ費(売れた時点で経費化)
- プライベートと明確に分けられない食費・衣服代
- 副業と関係のない趣味・エンタメ費用
確定申告の全手順(初めての人向け)
以下は給与所得がある会社員が、転売副業分を雑所得で申告する場合の手順だ(事業所得の場合は青色申告書の準備が加わる)。
- 年間売上を集計する:各プラットフォームの年間売上を確認。メルカリは「売上確認」画面、Amazonは「ペイメント」のCSVダウンロードで取得できる
- 仕入れ・経費を集計する:レシート・領収書・クレジットカード明細をまとめ、項目別に集計。スプレッドシートでも会計ソフト(freeeやマネーフォワード確定申告)でもOK
- 所得を計算する:「売上 − 仕入原価 − 諸経費 = 所得」。期末在庫がある場合は「期首在庫 + 仕入れ − 期末在庫 = 売上原価」として計算する
- e-Taxで申告書を作成する:国税庁e-Taxまたは確定申告書等作成コーナーで入力。給与の源泉徴収票も手元に用意しておく
- 提出・納税する:2月16日〜3月15日の間に提出。追加納税がある場合は期限内に振り込む(振替納税も選択可)
よくある失敗パターンと対策
物販経験者として、初めての申告でつまずきやすいポイントを3つ挙げる。
在庫を全額経費にしてしまう
年内に仕入れて売れなかった商品は「在庫(棚卸資産)」として計上し、売れた年に経費化する。「仕入れた分は全部経費」という勘違いが最も多い失敗だ。在庫が積み上がると帳簿と実態がズレ、後から修正が大変になる。
手数料・ツール代を見落とす
メルカリやAmazonに支払った手数料、Keepaなどのツール代は忘れずに経費計上しよう。年間を通じると数万円〜数十万円になることもある。各プラットフォームの手数料明細・決済レポートを年末に必ずダウンロードしておくこと。
領収書・レシートを保管していない
仕入れのレシートは5年間保存が原則(青色申告は7年)。スマートフォンの撮影アプリやクラウドストレージで保管するのが実用的だ。現金払いが多い場合は特に意識して保管しよう。
FAQ
メルカリで不用品を売った場合も確定申告が必要ですか?
自分が使っていた不用品(生活用動産)を売った場合は原則非課税で申告不要だ。ただし、営利目的で反復継続して仕入れ・販売している場合は副業所得として申告対象になる。「趣味の延長」か「副業」かは実態で判断されるため、継続的に利益を出している場合は申告を前提に行動しよう。
副業所得が20万円以下なら何もしなくていいですか?
所得税の確定申告は不要になるが、住民税は別途申告が必要な場合がある(自治体によって異なる)。また、会社が住民税を給与天引きしている場合、副業収入分が上乗せされて会社に副業が発覚する可能性もある。副業を知られたくない場合は「普通徴収(自分で納付)」を選ぼう。
青色申告と白色申告、どちらがいいですか?
事業所得で申告する場合、青色申告が圧倒的にお得だ。e-Tax利用+複式簿記が条件で最大65万円の青色申告特別控除が受けられる。ただし事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要。初年度は白色申告でも問題ないが、翌年度以降は青色申告への移行を検討しよう。
仕入れのための交通費はどこまで経費になりますか?
仕入れ目的が明確であれば、電車代・バス代・ガソリン代・高速料金・駐車場代が経費計上できる。プライベートと兼ねた場合は業務割合で按分する。ガソリン代は「仕入れのための走行距離 ÷ 総走行距離 × ガソリン代」で計算するのが一般的な方法だ。
確定申告しないとどうなりますか?
申告義務があるのに申告しないと、無申告加算税(最大20%)と延滞税(年14.6%)が課される可能性がある。フリマアプリの売上はプラットフォームが支払調書を税務署に提出する場合もあり、税務署側が把握していることもある。申告漏れのリスクより申告の手間の方がはるかに小さい。
参考文献
- 国税庁「事業所得と業務に係る雑所得の区分」 — 国税庁タックスアンサー, 2022年改正内容含む
- 国税庁「所得の区分のあらまし」 — 国税庁タックスアンサー
- 国税庁「必要経費」 — 国税庁タックスアンサー
- e-Tax(国税電子申告・納税システム) — 国税庁
- メルカリ「販売手数料について」 — メルカリ公式ヘルプ