積立NISAで全世界株ファンドを選ぼうとすると、必ずこの3つが候補に上がる。eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)・SBI・全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま)・楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンドだ。

どれも「低コスト・全世界分散」という点では優秀なファンドだが、細かく比べると差がある。読者からよくもらう質問が「結局どれが一番得なの?」という一言だ。本記事では信託報酬・純資産額・乖離率(トラッキングエラー)の3指標を数字で比べ、初心者が迷わず選べる結論を提示する。

3ファンドの基本スペック早見表(2025年8月時点)

まず基本スペックを一覧で確認しておこう。各数値は2025年8月時点の参考値であり、最新情報は各運用会社の公式サイトで確認してほしい。

項目eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)SBI・全世界株式(雪だるま)楽天・オールカントリー
運用会社三菱UFJ AMSBI AM楽天投信投資顧問
設定日2018年10月31日2017年12月6日2023年10月27日
信託報酬(税込)年0.05775%年0.1022%年0.0561%
ベンチマークMSCI ACWIFTSE Global All CapMSCI ACWI
構成銘柄数の目安約2,900銘柄約9,500銘柄約2,900銘柄
純資産額の規模感6兆円超(業界最大)数千億円規模数千億円規模(急成長中)

信託報酬だけ見ると楽天が最安、純資産額はeMAXIS Slimが圧倒的、ベンチマークはSBIだけ別の指数を使っている。それぞれ詳しく見ていこう。

信託報酬の比較:年0.01%の差は10年でいくら?

信託報酬とは、ファンドを保有している間に毎日差し引かれる管理コストだ(税込)。低いほど手元に残る金額が増える。

2025年8月時点の信託報酬を比べると以下のとおりだ。

  • 楽天・オールカントリー:年0.0561%(3ファンド中で最安)
  • eMAXIS Slim 全世界株式:年0.05775%
  • SBI・雪だるま:年0.1022%(3ファンド中で最高)

楽天とeMAXIS Slimの差は年わずか0.00165%だ。100万円を10年保有した場合のコスト差を単純計算すると約165円にしかならない。月3万円の積立なら差はさらに小さい。

一方、SBI・雪だるまとeMAXIS Slimの差は年0.04445%。100万円・10年で約4,445円の差となる。信託報酬の面では、雪だるまは他の2ファンドに比べて不利と言える。

重要なのは、信託報酬は「表面上のコスト」に過ぎないという点だ。実際の運用コストには売買手数料や有価証券取引税なども含まれる「実質コスト」がある。eMAXIS Slimは6年以上の運用実績があり、過去の「運用報告書」で実質コストを確認できる。楽天オルカンは設定2年未満のため、実質コストの蓄積データがまだ少ない点は念頭に置いておこう。

純資産額の比較:規模が大きいほど安心な理由

純資産額は「そのファンドに集まった総資金量」を示す指標だ。これが大きいほど以下のメリットがある。

  • 繰上償還リスクが極めて低い:純資産が小さいと運用会社がファンドを途中で終了させることがある。長期積立で最も避けたいリスクの一つだ
  • 乖離率が安定しやすい:資金規模が大きいほど売買コストが分散され、ベンチマークへの追随精度が高まる
  • 信頼性と流動性が高い:人気ファンドには自然と資金が集まり、好循環が生まれやすい

2025年8月時点の純資産額の比較:

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン):6兆円超(インデックス投信として業界断トツ)
  • 楽天・オールカントリー:設定2年で急成長中(数千億円規模)
  • SBI・雪だるま:設定7年で安定推移(数千億円規模)

eMAXIS Slimの純資産額は他2ファンドを大きく引き離している。2024年2月には信託報酬を0.1144%から0.05775%へ大幅引き下げを実施しており、「受益者還元型信託報酬」として純資産規模に応じてコストが下がる仕組みを採用している点も大きな特徴だ。

楽天オルカンは信託報酬が最安ながら、まだ設定から2年程度。純資産が今後どこまで伸びるかは注目点だが、現時点での長期積立の「安心感」ではeMAXIS Slimに軍配が上がる。

ベンチマーク・乖離率の比較:SBIだけ指数が異なる

ここが意外と見落とされがちなポイントだ。

eMAXIS Slimと楽天オルカンは同じベンチマーク(MSCI ACWI)を採用しているが、SBI・雪だるまは「FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス」という別の指数を使っている。

ファンドベンチマーク組み入れ銘柄数の目安特徴
eMAXIS Slim / 楽天オルカンMSCI ACWI約2,900銘柄大型・中型株が中心
SBI・雪だるまFTSE Global All Cap約9,500銘柄小型株まで含む広範な指数

FTSE Global All Capはその名のとおり「全てのキャップ(時価総額規模)」を対象とし、大型株・中型株に加えて小型株まで含む点が特徴だ。世界株式の時価総額カバー率という意味では、雪だるまが最も幅広い。

ただし、小型株は流動性が低く売買コストが嵩みやすい。長期的なリターン差はインデックス間で誤差の範囲内とされることが多く、信託報酬の割高分を補えるほどの差が出るかは慎重に見る必要がある。

乖離率(トラッキングエラー)について

乖離率とは、ファンドの実際のリターンがベンチマークとどれだけズレているかを示す指標だ(小さいほど良い)。eMAXIS Slimは2018年設定から6年超の運用実績があり、過去の乖離率は非常に小さく安定している。楽天オルカンは設定が浅いため、今後の蓄積データで判断することになる。最新の乖離率は各ファンドの「運用報告書」で確認できる。

結論:どれを選べばいいか

3指標の比較結果を踏まえた結論をシンプルにまとめる。

優先基準選ぶべきファンド理由
迷ったら最初の1本eMAXIS Slim 全世界株式純資産・運用実績・乖離率のバランスが最も良い
信託報酬の安さ最優先楽天・オールカントリー現時点で信託報酬最安(ただし実績の蓄積はこれから)
小型株まで広く持ちたいSBI・雪だるまFTSE指数で中小型株をカバー(ただし信託報酬は最高)

積立NISAで「全世界インデックスに乗るだけ」の戦略なら、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が最も無難な選択肢だ。信託報酬の差は楽天と比べて年0.00165%しかなく、実際の積立金額では年数十円〜百円台の違いだ。その差より、純資産6兆円超という圧倒的な実績と安定性の方が長期投資では重要度が高い。

すでにeMAXIS Slimを積み立てているなら、楽天に乗り換えるための手続きコスト(時間・心理的コスト)を考えると、そのまま継続するのが合理的な判断だ。

編集部でも長年eMAXIS Slimをベースに積立を続けているが、実感として「どれを選ぶかより、早く始めるかどうか」の方がリターンへの影響がはるかに大きい。まず口座を開いて積立を設定することが最優先だ。

FAQ

eMAXIS Slimと楽天オルカン、どちらも新NISAのつみたて投資枠で使えますか?

どちらも2025年8月時点で新NISA(つみたて投資枠)の対象ファンドとして取り扱われています。SBI・雪だるまも同様です。ただし取り扱い証券会社は異なる場合があるため、利用する口座のファンド検索で確認してください。

信託報酬の差が小さいなら、どのファンドでも実質同じですか?

信託報酬の差は小さいですが、純資産額・運用実績の長さ・乖離率の安定性は無視できません。特に20年・30年の長期積立では繰上償還リスクや実質コストの差が積み重なります。その観点からeMAXIS Slimのアドバンテージは現時点では明確です。

楽天証券以外でも楽天・オールカントリーは購入できますか?

楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンドは楽天証券以外でも取り扱い証券会社があります。ただしラインナップは証券会社によって異なるため、利用する証券口座で検索して確認してください。

SBI・雪だるまは小型株も含むから長期リターンが高くなりますか?

小型株は過去の学術研究でリターンプレミアムが指摘されることもありますが、インデックス全体の長期リターン差は誤差の範囲内とされることが多いです。雪だるまの信託報酬は他の2ファンドより高いため、小型株の「広さ」がコスト増を上回るかは一概には言えません。

すでにeMAXIS Slimを積み立てていますが、楽天オルカンに乗り換えた方がいいですか?

年間の信託報酬差は積立金額にもよりますが、月3万円(年36万円)の積立でも楽天との差は年約6円程度です。乗り換えの手間・心理的コストを考えると、特段の理由がなければeMAXIS Slimの継続が合理的です。

参考文献