2026年10月に施行が予定されているiDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正で、会社員の掛金上限が大幅に引き上げられる。特に企業年金のない会社員は月の上限が現行の23,000円から62,000円になる見込みで、年間744,000円まで全額所得控除の対象になる。

ただし、DB型企業年金や企業型DCを持つ会社員は計算が複雑で、改正後も上限がほぼ変わらないケースがある。本記事では2025年8月時点の情報をもとに、職業・企業年金の有無別に改正前後の影響を整理する。施行日・細部の規定は国民年金基金連合会や厚生労働省の最新情報を必ず確認してほしい。

2026年iDeCo改正の背景と主な変更点

iDeCoは1960年代から続く年金制度の補完的な位置づけで、拠出金が全額所得控除になる節税効果が最大の特徴だ。しかし、会社員の上限が月23,000円と自営業(月68,000円)と比べて低く、「会社員には使い勝手が悪い」という指摘が続いていた。

2026年改正の核心は、第2号被保険者(会社員・公務員)のうち「企業年金のない会社員」と「第3号被保険者(専業主婦・主夫)」の上限を月62,000円に引き上げることだ。自営業者の68,000円に近づき、職業間の格差が縮まる。

編集部で確認したところ、「自分がiDeCoに月いくら掛けられるか答えられる」会社員は意外と少ない。改正前に自分の区分を把握しておくことが節税の第一歩になる。

職業・企業年金別:掛金上限の改正前後比較

以下は2025年8月時点の情報をもとにした、改正前後の掛金上限(月額)の比較表だ。

区分改正前(現行)改正後(予定)変化
自営業者・フリーランス(第1号)68,000円68,000円変化なし
会社員(企業年金なし)23,000円62,000円+39,000円
会社員(企業型DCのみ)20,000円※企業主拠出と合算55,000円上限の範囲内で調整ケースによる
会社員(DB型企業年金あり)12,000円12,000円(当面変更なし)変化なし
公務員12,000円12,000円(当面変更なし)変化なし
専業主婦・専業主夫(第3号)23,000円62,000円+39,000円

※2024年12月改正後の現行上限。改正前は企業型DC加入者のiDeCo加入自体に規約変更が必要だった。

最も恩恵が大きいのは「企業年金のない会社員」と「専業主婦・主夫」の2区分だ。改正後は月最大62,000円・年間744,000円が全額所得控除になる。

節税効果シミュレーション:年収別の改正前後比較

iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除になる(国税庁・小規模企業共済等掛金控除)。以下は「企業年金なしの会社員」の改正前後の年間節税額の目安だ。

年収実効税率目安(所得税+住民税)改正前(月23,000円)年間節税改正後(月62,000円)年間節税
400万円約20%約55,200円約148,800円
600万円約30%約82,800円約223,200円
800万円約33%約91,080円約245,520円
1,000万円約43%約118,680円約320,040円

※社会保険料控除後の課税所得を基準にした概算。各種控除の状況により実際の税率は異なる。正確な計算はFP・税理士に相談すること。

年収600万円で月62,000円フル拠出した場合、年間約22万円の節税効果になる。60歳まで引き出せない制約はあるが、手取りベースで年間22万円を確保できる効果は大きい。20年積み立てを前提にすると、節税だけで累計440万円以上の差が出る計算だ。

改正後もiDeCoを続けるべきか?ケース別判断

改正によって全員が同じ恩恵を受けるわけではない。以下の4ケースで判断の方向性を整理する。

ケース1:会社員・企業年金なし → 新規加入・増額を強く推奨

月62,000円まで引き上がるため、改正は節税の大きなチャンスだ。すでに月23,000円を拠出している人は、改正施行後に増額手続きをすることで節税効果が最大2.7倍になる。未加入の人は改正を機に加入を検討する価値が高い。

ケース2:会社員・企業型DC加入 → 企業主拠出額を確認してから判断

企業型DCと合算で月55,000円が基本上限になる。例えば企業が月30,000円を拠出している場合、iDeCoに回せるのは最大25,000円だ。現行の月20,000円上限とほぼ変わらないケースも多い。まず人事部に自社の企業拠出額を確認してから計算すること。

ケース3:DB型企業年金加入 or 公務員 → 現状維持で継続

月12,000円の上限は当面変わらない見込みだ。節税額は年間28,800〜61,560円(年収400〜1,000万円)と限定的だが、運用益が非課税になるメリットは変わらず続く。すでに加入しているなら継続、未加入なら上限の低さを踏まえNISA優先でも合理的な判断だ。

ケース4:専業主婦・主夫(第3号) → 課税所得の有無で判断

月62,000円まで枠が広がるが、所得税が課されていない場合は所得控除の節税効果がゼロだ。住民税の非課税限度額(年間43万円)を超える所得がある場合は住民税で効果が出る。パート収入がある場合など、個別の課税状況を確認した上で判断すること。

見落としがちなiDeCoの3つのコスト

節税メリットを正しく評価するために、コスト面も把握しておきたい。

①口座管理手数料: 金融機関によって月額0円〜500円以上の差がある。SBI証券・楽天証券・松井証券などのネット証券は国民年金基金連合会への拠出時に加算される手数料(月105円)のみで済む商品が多い(2025年8月時点)。

②信託報酬(投資信託の運用コスト): 年率0.1%未満のインデックスファンドを選べるネット証券に対し、銀行や対面証券では年1%超の商品しか選べないケースもある。20〜30年の長期運用では信託報酬の差が数十万〜百万円単位の差になる。

③60歳まで引き出し不可(原則): iDeCoは原則として60歳(通算加入月数10年未満の場合は61〜65歳)まで解約・引き出しができない。急な出費に備え、生活防衛資金(生活費の6か月分が目安)を別途確保した上で拠出額を設定するのが基本だ。

FAQ

iDeCo 2026年改正はいつから適用されますか?

2026年10月施行が予定されています(2025年8月時点の情報)。正式な施行日・細部の規定は国民年金基金連合会や厚生労働省の公式発表で必ず確認してください。

既存のiDeCo加入者は自動的に上限が変わりますか?

掛金上限が引き上げられても、実際の拠出額が自動で増えることはありません。増額したい場合は加入している金融機関で「加入者月別掛金額変更届」を提出する手続きが必要です。

企業型DCに加入していてもiDeCoに入れますか?

2022年10月の改正から、企業型DC加入者も原則としてiDeCoに加入できるようになりました。ただし掛金の上限は企業主拠出分との合算(月55,000円が上限)で計算されます。自社の企業型DC拠出額を人事部に確認してから申し込むと確実です。

iDeCoの節税は受け取り時にも注意が必要ですか?

受け取り時は「一時金」なら退職所得、「年金形式」なら雑所得として課税されます。退職金と同じ年に一時金受け取りをすると退職所得控除が圧迫されるケースがあります。受け取り方・タイミングは事前にFPや税理士に相談することをおすすめします。

NISAとiDeCoはどちらを優先すべきですか?

所得控除でその年の税負担を減らしたいならiDeCo、いつでも引き出せる柔軟性を重視するならNISA、という使い分けが基本です。生活防衛資金を確保した上でiDeCoで節税し、残りをNISAで運用するのが多くの会社員に適した組み合わせです。

参考文献