2026年4月1日から、少額減価償却資産の特例の上限が30万円から40万円に引き上げられます。副業で使うPC・カメラ・動画編集ソフトなど、これまで4年かけて減価償却していた設備を購入年に全額経費にできるチャンスです。
物販をやっていた頃、撮影用のカメラを35万円で買って「あと5万円安ければ一括経費にできたのに」と悔しい思いをした経験があります。今回の改正で、まさにその価格帯がカバーされるようになりました。この記事では、改正の内容・適用条件・金額区分ごとの処理方法を整理します。
2026年4月の税制改正で何が変わるのか
結論から言うと、青色申告をしている個人事業主・副業者が、取得価額40万円未満の減価償却資産を購入年に全額経費にできるようになります。
これは「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」と呼ばれる制度の拡充です。令和7年度税制改正大綱(2024年12月20日閣議決定)に盛り込まれ、2026年(令和8年)4月1日以後に取得する資産から適用されます。
改正前後の比較は以下のとおりです。
| 項目 | 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 一括経費にできる上限 | 30万円未満 | 40万円未満 |
| 年間の合計上限 | 300万円 | 300万円(変更なし) |
| 対象者 | 青色申告の中小企業者等 | 同左(変更なし) |
つまり、30万円以上40万円未満の資産(税込経理なら税込価格、税抜経理なら税抜価格で判定)が新たに一括経費の対象に加わります。副業用の高スペックPC(35万円前後)や一眼カメラ(38万円前後)がちょうどこの価格帯に該当します。
少額減価償却の特例を使う3つの条件
この特例を使うには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1: 青色申告をしていること
青色申告承認申請書を所轄税務署に提出し、承認を受けている必要があります。白色申告では使えません。副業でも開業届と青色申告承認申請書を出せば青色申告は可能です。開業届は事業開始から1ヶ月以内、青色申告承認申請は開業日から2ヶ月以内(もしくは適用を受けたい年の3月15日まで)が提出期限です。
条件2: 常時使用する従業員が500人以下であること
個人の副業であれば、ほぼ確実にこの条件はクリアできます。従業員を雇っていなければ0人なので問題ありません。
条件3: 年間合計300万円以内であること
この特例で経費にできる資産の合計額は、1年間(1月〜12月)で300万円が上限です。たとえば、38万円のPCと35万円のカメラと28万円の編集ソフトを同じ年に買った場合、合計101万円なので問題なく全額経費にできます。
取得価額ごとの経費処理フローチャート
減価償却資産の処理方法は、取得価額によって3つの区分に分かれます。2026年4月以降の取得を前提に整理します。
区分1: 10万円未満 → 消耗品費として即時経費
取得価額が10万円未満(税込経理なら税込で判定)の資産は、少額の減価償却資産として、購入した年に全額を「消耗品費」で経費にできます。青色・白色を問わず使えます。
例: USBマイク(8,000円)、Webカメラ(6,500円)、外付けSSD(9,800円)
区分2: 10万円以上20万円未満 → 一括償却資産(3年均等償却)
10万円以上20万円未満の資産は「一括償却資産」として3年間で均等に経費にできます。こちらも青色・白色を問いません。ただし青色申告者は、次の区分3の特例を使って全額経費にすることも可能です。
例: エントリー向け動画編集ソフト(12万円)、モニター2枚セット(15万円)
区分3: 10万円以上40万円未満 → 少額減価償却資産の特例(青色申告限定)
2026年4月以降に取得した10万円以上40万円未満の資産は、青色申告者であればこの特例を使って購入年に全額経費にできます。確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」(別表十六(七))の添付が必要です。
例: 高スペックノートPC(35万円)、ミラーレス一眼カメラ(38万円)、動画編集用デスクトップPC(37万円)
40万円以上の場合
40万円以上の資産は通常の減価償却が必要です。PCなら耐用年数4年(サーバー用途は5年)、カメラなら5年で、定額法または定率法で毎年経費に計上します。個人事業主の場合、届出をしなければ定額法が適用されます。
副業で使える具体的な設備投資シミュレーション
三児の母として家計管理をしながら副業をしている筆者の実感だと、設備投資は「いつ買うか」で税負担が大きく変わります。以下、副業で購入する可能性が高い設備を2026年4月以降に購入した場合のシミュレーションです。
| 設備 | 想定価格(税込) | 改正前の処理 | 改正後の処理 | 初年度の節税効果 |
|---|---|---|---|---|
| 動画編集用PC | 35万円 | 4年で減価償却(初年度8.75万円) | 全額経費(35万円) | 約5.3万円の差(税率20%の場合) |
| ミラーレスカメラ | 38万円 | 5年で減価償却(初年度7.6万円) | 全額経費(38万円) | 約6.1万円の差(税率20%の場合) |
| MacBook Pro M4 | 32万円 | 全額経費(30万円特例の対象外→4年償却) | 全額経費(40万円特例の対象) | 約4.7万円の差(税率20%の場合) |
※ 節税効果は所得税率20%(課税所得330万円〜695万円)の場合の概算。住民税10%を加えると効果はさらに大きくなります。
要するに、30万〜40万円の設備を買う予定があるなら、2026年4月以降に購入時期をずらすだけで初年度の経費が大幅に増えるということです。
確定申告で少額減価償却の特例を適用する手順
実際に確定申告で特例を適用する流れを整理します。
ステップ1: 資産の取得価額を確認する
取得価額には本体価格だけでなく、送料・設置費用・付属品(PCに同梱されたソフトなど)も含まれます。税込経理をしている場合は税込額、税抜経理の場合は税抜額で判定します。副業の場合、多くの方が税込経理(簡易課税 or 免税事業者)なので、税込価格で40万円未満かどうかを確認してください。
ステップ2: 事業使用割合(家事按分)を決める
副業用と私用で兼用する設備は、事業で使う割合だけを経費にする「家事按分」が必要です。たとえば副業用PCをプライベートでも使う場合、使用時間の記録などから事業使用割合を算出します。
一般的な按分の目安は以下のとおりです。
- 副業専用の設備 → 100%経費
- 副業7割・私用3割 → 70%を経費(35万円のPCなら24.5万円)
- 副業5割・私用5割 → 50%を経費
税務調査で否認されないよう、使用ログや作業記録を残しておくことを推奨します。
ステップ3: 確定申告書に明細を添付する
e-Taxまたは紙の確定申告書で、以下を記載・添付します。
- 青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に資産名・取得価額・償却方法「措法28の2」を記載
- 「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」を添付(e-Taxなら画面上で入力可能)
会計ソフト(freeeややよいの青色申告など)を使っていれば、固定資産登録で「少額減価償却資産」を選択するだけで自動的に処理されます。
注意点とよくある間違い
2026年3月以前に購入した資産には適用されない
改正後の40万円基準が適用されるのは2026年4月1日以後に取得した資産に限られます。3月に駆け込みで買った35万円のPCは従来の30万円基準が適用されるため、通常の減価償却が必要です。購入を検討しているなら4月まで待つのが賢明です。
「取得」の時期に注意
「取得」とは、資産を事業の用に供した日(実際に使い始めた日)です。3月に注文して4月に届いて使い始めた場合は、4月取得として改正後の基準が適用されます。
年間300万円を超えた分は通常償却
年間の特例適用額が300万円を超えた場合、超過分は通常の減価償却になります。大量の設備投資を予定している場合は、年をまたいで分散購入することも検討してください。
転売目的の資産は対象外
事業で使用する目的で取得した資産が対象です。転売(売却)目的で購入した商品は棚卸資産であり、減価償却資産ではありません。
FAQ
副業が雑所得でも少額減価償却の特例は使えますか?
使えません。この特例は青色申告が必須条件なので、事業所得として申告する必要があります。副業を雑所得で申告している場合は、開業届を提出して事業所得に切り替え、青色申告承認申請を行う必要があります(2026年分から適用するなら2026年3月15日までに申請)。
消費税の免税事業者ですが、税込40万円未満で判定してよいですか?
はい。免税事業者は税込経理が原則なので、税込価格で40万円未満かどうかを判定します。たとえば本体価格36万3,636円(税込39万9,999円)なら特例の対象です。
中古品を購入した場合も特例は使えますか?
使えます。新品・中古を問わず、取得価額が40万円未満であれば特例の対象です。中古のカメラやPCをメルカリやヤフオクで購入した場合でも適用できます。ただし、領収書やレシートは必ず保管してください。
プライベート兼用のPCでも全額経費にできますか?
全額は難しいです。事業使用割合に応じた家事按分が必要です。たとえば事業使用70%なら、38万円のPCの経費計上額は26.6万円になります。使用時間の記録など、按分の根拠を残しておくことが重要です。
2025年中に購入した30万円以上の設備は、2026年の確定申告でこの特例を使えますか?
使えません。改正後の40万円基準は2026年4月1日以後に「取得」した資産が対象です。2025年中に取得した30万円以上40万円未満の資産は、従来どおり通常の減価償却(耐用年数に応じた分割計上)が必要です。
参考文献
- 令和7年度税制改正大綱 — 財務省, 2024年12月
- No.2100 減価償却のあらまし — 国税庁タックスアンサー
- No.2070 青色申告制度 — 国税庁タックスアンサー
- No.2210 やさしい必要経費の知識 — 国税庁タックスアンサー
- 中小企業税制 — 中小企業庁