3月期決算の会社(日本の上場企業の約60%を占める)は、7月中旬〜8月初旬に第1四半期(Q1:4〜6月分)の決算発表を行う。2026年8月現在、まさにこのQ1決算ラッシュの真っ只中だ。

「持っている株の決算が出たけど、どこを見ればいいか分からない」という声は毎年増える。結論から言うと、決算短信で確認すべき数字は最初は売上高・営業利益・通期進捗率の3つだけでいい。この3つを正しく読めれば、保有株をどうするかの判断に自信が持てるようになる。

決算短信はどこで確認する?無料で見られる3つの入手先

決算が発表されたらまず「決算短信(けっさんたんしん)」を入手する。決算短信とは、上場企業が決算発表日に証券取引所に提出する業績報告書だ。最も速く正確な情報源になる。

無料で閲覧できる主な入手先は3つある(2026年8月現在):

  • TDnet(東証電子開示システム): 東京証券取引所が運営する公式開示サービス。決算発表当日にリアルタイムでPDFが公開される。最速の情報源だ
  • 株探(かぶたん): 銘柄別に決算数値・進捗率がコンパクトに整理されている。初心者に最も使いやすい画面構成だ
  • Yahoo!ファイナンス: 銘柄ページの「決算」タブで確認できる。短信PDFへのリンクも掲載されている

初心者は株探の銘柄ページを最初の確認先にするのが実用的だ。「業績」タブを開くと売上高・営業利益・進捗率が一目で確認できる画面が表示される。読者からよく聞かれるのが「どのサイトを最初に見ればいいか」だが、株探を起点にして疑問が出たらTDnetで原文PDFを確認する、という流れが効率的だ。

初心者が必ず確認する3つの数字

① 売上高(Revenue)— 事業の成長を確認する

売上高は会社の「稼ぎの総量」を示す。確認するのは前年同期比の増減率だ。

  • 前年比プラス: 事業が成長している基本シグナル
  • 前年比マイナス: なぜ減ったかを決算短信のコメント欄で必ず確認する。一時的なコスト先行なのか、需要が落ちているのかで意味が全く異なる

ただし、売上高が増えていても利益が出ていなければ経営的には要注意だ。次の営業利益と必ずセットで確認する。

② 営業利益(Operating Profit)— 本業の稼ぐ力を見る

営業利益は「本業でどれだけ儲けているか」を示す数字で、純利益よりも重要視する。理由は、純利益には特別利益・特別損失(土地の売却益や子会社売却など一時的な要因)が含まれており、本業の実力が見えにくいからだ。

営業利益の確認ポイントは2つだ:

  • 前年同期比の増減率
  • 通期会社予想に対してどのくらいの水準か(→ 進捗率で確認)

③ 通期進捗率 — 年間目標の達成ペースを判断する

通期進捗率は初心者がいちばん見落としやすいが、決算の「良し悪し」を最も端的に示す指標だ。

通期進捗率(%)= Q1実績(営業利益)÷ 通期会社予想(営業利益)× 100

進捗率の目安(業種・季節性によって異なるため参考値として使うこと):

  • 25%以上: 概ね順調。年間ペースに沿っている
  • 30%以上: 好調。上方修正の可能性を意識し始めるライン
  • 20%未満: 要注意。下半期に挽回できる根拠があるかを決算短信の「見通し」欄で確認する
  • 15%未満: 下方修正リスクが高い。保有継続の根拠を再点検する

例として、B社が通期営業利益予想100億円を掲げており、Q1実績が28億円だった場合の進捗率は28%だ。通期目標に対して順調なペースと判断できる。

「なぜ25%が基準なのか」という質問もよく来る。通期を12ヶ月とした場合、第1四半期は3ヶ月分(4分の1)にあたるため、単純平均で25%が目安とされている。ただし小売・外食・レジャーなど季節性の高い業種は、Q1進捗率が15〜20%程度でも正常なケースがある。投資先の業種特性を事前に把握しておこう。

数字の「読み方」:会社予想 vs 市場コンセンサスの違い

市場が注目するのは「数字そのもの」より「予想との乖離」だ。同じ営業利益でも、会社予想(会社が期初に発表した見通し)と、アナリストが集計した市場コンセンサス予想を上回るか下回るかで株価の動きが大きく変わる。

ここで覚えておきたいのが「出尽くし」という現象だ。好決算でも発表直後に株価が下落することがある。決算期待で事前に株価が上昇していた場合、「よかった決算を確認したので売る」という動きが出やすい。逆に、悪い決算でも「想定内」として株価が上がることもある。

初心者のうちは「好決算=株価が上がる」と思いがちだが、実際は「予想との乖離と、それをどれだけ市場が既に織り込んでいたか」が株価を動かすのだと理解しておこう。

保有株をどうするかの判断手順

Q1決算を見た後の保有株判断は以下の手順で進める。

ステップ1: 通期会社予想の修正があるか確認する

Q1決算と同時に通期業績予想の修正が発表されることが多い。これが最重要チェックポイントだ。

  • 上方修正: 通期予想を引き上げた → 「今期はさらに良くなる見込み」。ポジティブシグナル
  • 下方修正: 通期予想を引き下げた → 「年間目標を達成できない見込み」。保有根拠を再検討する
  • 据え置き(変化なし): 進捗率と業種特性を踏まえて判断する

ステップ2: 投資した理由(テーマ)が崩れていないか確認する

そもそも「なぜこの株を買ったか」を思い出す。例えば「主力商品が海外市場で伸びると期待して買った」なら、Q1決算の海外売上高が前年比プラスかどうかを確認する。テーマが崩れていなければ、短期的な業績ブレは許容範囲になりやすい。逆に言えば、投資テーマが崩れた場合こそ最も注意が必要だ。

ステップ3: 状況別の判断目安

状況 判断の目安
進捗率25%以上 + 予想据え置きまたは上方修正 継続保有が基本線
進捗率25%以上 + 投資テーマ維持 継続保有
進捗率20%未満 + 下方修正 保有根拠を再検討。損切りを含め判断
進捗率15%未満 + 投資テーマ崩壊 損切りを真剣に検討するレベル

上記はあくまで一般的な目安であり、個々の銘柄・投資方針によって最適な判断は異なる。投資判断は最終的に自己責任で行うこと。

初心者がやりがちな3つのミス

ミス1: 純利益だけを見てしまう

決算ニュースの見出しには「最終益〇〇%増」と出ることが多い。しかし純利益には土地売却益など一時的な要因が含まれる。本業の実力を見るには営業利益を確認すること。純利益が増えていても営業利益が減っているなら要注意だ。

ミス2: 前期比の増減だけで判断してしまう

前年同期比プラスでも、会社予想対比でマイナスならば市場にはネガティブに映ることがある。「絶対値(前期比)」と「予想対比」の2軸で見る習慣をつけよう。

ミス3: 決算発表直後にすぐ売買してしまう

決算直後の株価は過剰反応しやすい。個人投資家の場合、決算発表直後の値動きに振り回されて売買するのではなく、翌営業日の相場が落ち着いてから改めて判断するのが損失を防ぐうえで有効なケースが多い(ただし個別銘柄の状況によって異なる)。

FAQ

Q1決算(第1四半期)と中間決算の違いは何ですか?

3月期決算の会社の場合、Q1は4〜6月の3ヶ月間の業績を指す。中間決算(第2四半期)は4〜9月の6ヶ月間が対象だ。Q1は通期への影響を早期に確認できるが、3ヶ月分のデータしかないため季節変動の影響を受けやすい点に注意が必要だ。

進捗率25%が目安とされる根拠は何ですか?

通期を12ヶ月とした場合、第1四半期は3ヶ月分(全体の4分の1)にあたる。4分の1=25%が均等ペースの目安だ。ただしこれは業種平均の参考値であり、季節性の高い小売・外食・レジャーなどはQ1進捗率が15〜20%程度でも正常なケースがある。投資先の業種特性を事前に確認しておこう。

「上方修正」と「下方修正」の株価への影響を教えてください

上方修正は会社が通期の業績予想を引き上げること、下方修正は引き下げることだ。上方修正は株価にプラス、下方修正はマイナスに働くことが多い。Q1決算発表時に同時発表されることが多く、特に下方修正はサプライズになりやすい。決算発表日のIR情報は必ずチェックしておきたい。

決算短信はどこで無料で読めますか?

東京証券取引所が運営するTDnet(東証電子開示サービス)で無料で閲覧・ダウンロードできる。企業名や銘柄コードで検索するとPDFを入手できる。また、株探の「業績」タブやYahoo!ファイナンスでも要点を整理した形式で確認できる。

損切りの具体的な基準はありますか?

一般的には買値から10〜15%下落した場合に損切りを検討するルールが知られているが、決算ベースでは「下方修正が2期連続した場合」や「投資した理由(テーマ)が崩れた場合」が損切りを検討するタイミングの参考になる。ただしこれは一般的な考え方であり、個々の投資方針や銘柄状況によって最適な行動は異なる。

参考文献