2025年12月に閣議決定された「令和8年度(2026年度)税制改正大綱」で、新NISAの制度設計が一部見直されることが正式に決まりました。2024年1月にスタートした新NISAですが、わずか2年で大きなアップデートが入ります。
副業で得た利益を投資に回している人や、これから積立を始めようとしている人にとって、今回の改正は「何に積み立てるか」の選択肢を変える可能性があります。この記事では、2026年度改正の3つの柱を整理し、今の積立戦略を見直すべきかどうかの判断材料を提示します。
編集部でも新NISAの枠を使い切った後の「次の一手」を探っていたところだったので、改正内容が出てすぐに整理にかかりました。特に債券ファンドの解禁は、リスクを抑えて運用したい層にとって見逃せない話です。
変更点1:つみたて投資枠に債券ファンドが追加される
結論から言うと、2026年度改正の目玉は「つみたて投資枠の対象商品に債券を含む投資信託が加わる」ことです。
現行の新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)の対象は金融庁が指定したインデックスファンドやアクティブファンドに限られていました。これらはすべて「株式を含む投資信託」であり、債券だけで構成されたファンドは対象外でした。
2026年度改正では、この要件が緩和され、債券のみで構成された投資信託(いわゆる債券ファンド)もつみたて枠の対象に加えられます。金融庁の「つみたて投資枠対象商品の届出一覧」は改正施行後に更新される見通しです。
具体的にどんな商品が対象になるかは、金融庁が定める告示の改正を待つ必要がありますが、国内債券インデックスファンド(NOMURA-BPI総合連動型など)や、先進国債券インデックスファンド(FTSE世界国債インデックス連動型など)が候補として挙がっています。
債券ファンドが加わると何が変わるのか
つまり、つみたて枠の中だけでも「株式+債券」の分散ポートフォリオが組めるようになります。これまでは、債券に投資したければ成長投資枠(年間240万円)を使うか、NISA外の特定口座で購入するしかありませんでした。
たとえば「つみたて枠で月10万円」を積み立てている人が、そのうち2〜3万円を債券ファンドに振り分けるといった使い方が可能になります。年齢が高めでリスクを抑えたい人や、すでにオルカン・S&P500で株式比率が高くなっている人には選択肢が広がります。
ただし注意点もあります。債券ファンドは株式ファンドと比べてリターンが低い傾向があり、2026年6月時点の国内債券インデックスの過去10年間の年率リターンは約1〜2%程度です(日本取引所グループ公表データより)。非課税メリットを最大化したいなら、リターンの高い株式ファンドに枠を使い、債券は課税口座で持つという考え方も合理的です。
変更点2:売却した非課税枠が年内に復活する
2つ目の変更点は、売却時の非課税枠復活のタイミングです。
現行制度では、NISA口座で保有している商品を売却した場合、その分の非課税枠(簿価ベース)が復活するのは「翌年以降」でした。つまり、年の途中で売却しても、その年のうちには枠が戻りません。
2026年度改正では、この仕組みが変わり、売却した非課税保有限度額(生涯投資枠1,800万円の一部)が「売却した年の翌年」ではなく「売却した年内」に復活する方向で調整されています。
これは実務上、かなり大きな変化です。たとえば、副業の収入が急に必要になって年前半にNISA資産を一部売却した場合でも、年後半に余裕ができたら同じ年のうちに非課税枠を再利用して買い直せます。
注意:年間投資上限額は変わらない
ここで混同しやすいのが「年間投資枠」と「生涯投資枠」の違いです。年内に復活するのは生涯投資枠(1,800万円)の消費分であり、年間の投資上限(つみたて枠120万円+成長投資枠240万円=合計360万円)は変わりません。
要するに、年間360万円の投資上限をすでに使い切っている人は、売却しても同年中に追加投資はできません。あくまで「生涯枠に余裕が戻る」という話です。まだ1,800万円の枠を使い切っていない多くの人にとっては、直接的な影響は限定的かもしれません。
変更点3:未成年者向けNISA(こどもNISA)の新設
3つ目は、18歳未満を対象とした新しいNISA口座の創設です。旧制度のジュニアNISAは2023年に新規口座開設が終了しましたが、2026年度改正で新たに「こどもNISA(仮称)」が設けられます。
2026年6月時点で公表されている概要は以下のとおりです(財務省「税制改正の大綱」より)。
- 対象:0歳〜17歳の日本居住者
- 年間投資枠:80万円
- 非課税保有限度額(生涯枠):未定(大綱には明記なし、今後の政令で確定見込み)
- 対象商品:つみたて投資枠と同じ(改正後の基準、つまり債券ファンドも含む)
- 18歳到達後:成人NISAへ自動移管
- 払い出し制限:旧ジュニアNISAと異なり、いつでも払い出し可能
子どもがいる家庭では、教育資金の準備手段として学資保険や定期預金と比較検討する対象になりえます。ただし、投資信託には元本割れリスクがある点は押さえておく必要があります。
今の積立戦略を見直すべきか? 3つの判断基準
改正内容が分かったところで、実際に「今の積立を変えるべきか」を判断するための基準を整理します。
判断基準1:株式100%のポートフォリオにリスクを感じているか
現在つみたて枠でオルカンやS&P500に全額投資している人は、改正後も「そのまま」で問題ありません。債券ファンドが対象に加わったからといって、必ず組み入れる必要はないからです。
一方、2024〜2025年の株価下落局面で「含み損が気になって眠れなかった」という経験がある人は、つみたて枠の一部を債券ファンドに振り分ける選択肢を検討してもよいでしょう。投資の継続が最優先であり、リスク許容度を超えた配分は長続きしません。
判断基準2:年内に売却する可能性があるか
売却枠の年内復活は、頻繁に売買する人よりも「緊急時に取り崩す可能性がある人」にメリットがあります。副業の資金繰りで一時的にNISA資産を現金化するケースなどが該当します。
逆に、長期積立を淡々と続ける方針の人には、この変更は実質的に関係ありません。「制度が変わったから何か動かなければ」と焦る必要はないです。
判断基準3:子どもの教育資金をどこで準備するか
こどもNISAの新設で、学資保険・定期預金・特定口座での投信積立に加えて、新たな非課税の選択肢が加わります。ただし、元本保証がないため、「5年後に確実に使う教育費」をこどもNISAに全額投入するのはリスクが高いです。
用途と時間軸に応じて、確実に使う分は預金・保険、10年以上先の分はこどもNISAといった使い分けが現実的です。
施行スケジュールと今やるべきこと
2026年6月時点での施行スケジュールは以下のとおりです。
- 2025年12月:令和8年度税制改正大綱が閣議決定
- 2026年3月:関連法案が国会で成立
- 2026年中(時期未定):金融庁がつみたて投資枠の対象商品基準を改正告示
- 2027年1月(見込み):改正後の制度で運用開始、こどもNISA口座の開設受付開始
つまり、実際に債券ファンドをつみたて枠で購入できるようになるのは、早くても2027年1月からと見込まれます。今すぐ何かを変更する必要はありません。
今やるべきことがあるとすれば、以下の2点です。
- 自分のリスク許容度を再確認する:含み損がいくらまでなら耐えられるかを数字で把握しておく
- 利用中の証券会社の対応を確認する:SBI証券・楽天証券・マネックス証券など主要ネット証券は、改正施行前に対応方針を発表する見通しです。各社のSBI証券、楽天証券などの公式サイトで最新情報をチェックしましょう
FAQ
債券ファンドをつみたて枠で買えるようになるのはいつからですか?
2027年1月からの見込みです。2026年度税制改正の関連法案は2026年3月に成立しましたが、金融庁の告示改正を経て、実際の対象商品が確定するのは2026年後半になる見通しです。
今持っているオルカンやS&P500の積立設定は変更すべきですか?
現時点で変更する必要はありません。債券ファンドの追加は選択肢が増えるだけで、既存の積立をやめる理由にはなりません。改正施行後に、自分のリスク許容度に合わせて配分を見直すかどうか判断すれば十分です。
こどもNISAは旧ジュニアNISAと何が違いますか?
大きな違いは「いつでも払い出し可能」な点です。旧ジュニアNISAでは18歳まで原則払い出しができない制約がありましたが、こどもNISAではこの制限が撤廃されます。年間投資枠は80万円で、旧制度と同額です。
売却枠の年内復活で、短期売買が有利になりますか?
NISAは長期投資を前提とした制度であり、短期売買で利益を出す用途には向いていません。年内復活は「やむを得ず売却した場合に枠が無駄にならない」という安全弁であり、頻繁な売買を推奨するものではありません。
債券ファンドと個人向け国債、NISAで買うならどちらが有利ですか?
個人向け国債はそもそもNISAの対象外です(NISA対象は投資信託・ETF・上場株式)。債券ファンド(投資信託)はNISAで非課税運用でき、個人向け国債は特定口座で利子に20.315%課税されます。元本保証が欲しいなら個人向け国債、非課税で運用したいなら債券ファンドと、目的に応じて使い分けるのが合理的です。
参考文献
- 令和8年度税制改正の大綱 — 財務省
- NISAとは? — 金融庁
- つみたて投資枠対象商品届出一覧 — 金融庁
- SBI証券 公式サイト — SBI証券
- 楽天証券 公式サイト — 楽天証券